農業協同組合新聞 JACOM
 
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コラム
とんぼの独り言

もったいない メロンを1000tも廃棄
農薬使用回数制限と食の安全
 この前新聞を見てびっくりした。何にびっくりしたかって? だって、おいしいメロンが1000トンも廃棄されたっていうじゃないですか。廃棄の理由は、農薬取締法における農薬の使用基準違反だそうな。チウラムとかいう農薬の有効成分が使用回数オーバーであることがわかって、産地が廃棄したと書いてあった。新聞には、さらにこう書いてあった。「メロンの農薬残留分析の結果、メロンの実からはチウラムは検出されなかった」と。はて? 農薬の成分が検出されていないのに何で廃棄しなければならないのだろうか? 何か変ではないだろうか?
 農薬取締法って、安全な農産物を生産するために、農薬の使用をあらゆる角度から検証し、この使い方なら大丈夫だって基準を決めている法律ではなかっただろうか。そうやって決められた使用回数制限は当然守られなければならない基準であるのはわかる。しかし、残留農薬が検出されていない、いや検出されるはずもないのになぜ廃棄されなければならないのだろう。
 今回の廃棄は、メロンの苗になる前の種子消毒に種苗会社が農薬取締法で定められた農薬使用回数の制限を越えてチウラムを使用してしまったためであるとのことだが、生産物に残留していない農薬を、使った回数だけで取り締ることに何の意味があるのであろうか。
 メロンの種子って、長さ1cm、幅4〜5mm、厚さ1〜2mmぐらいだから、大きくみても体積は0.1立法cm程度だろう。それが、成長するとメロンとしての体積は何万倍、何十万倍となる。ためしに、計算しやすいので、果実の体積を求めてみる。直径20cmの実がまん丸だとすると、その体積は約4200立法cmとなり、種子の約4万2000倍にもなる。実際には、葉っぱや茎、芽かきで除かれる体積も加えると、べらぼうなものとなるはずである。仮に、種子に付着しているチウラム濃度を濃い目に見積もって200ppmであったとすると、この種子に付着したチウラムが全て果実に移ると仮定(こんなことは絶対あり得ないことではあるが)すれば、果実に残るチウラム濃度は0.005ppmとなり、ポジティブリスト制度の一律基準よりさらに低い濃度となる。
 事実、種子消毒剤が果実等の収穫物に残留してしまう事例は聞いたことがないので、今回のメロンは安全性の上では全く問題のない品物なのである。安全を確保するための規制強化は大いにやるべきではあるが、現実に合わないおかしな規制は即座に改めるべきではないだろうか。(田畑とんぼ)

(2006.4.28)



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