農業協同組合新聞 JACOM
 
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コラム
とんぼの独り言

ポジティブリスト制度
−その3 農家は何をすべきか

 5月29日にポジティブリスト制度が施行されて、早3か月になる。その間に、輸入もので摘発例があったものの、国内ではいたって静かである。
 前回までにポジティブリスト制度がどんな制度なのか紹介し、「何やら難しく厳しい制度のようだな」という印象を持たれた方も多いかもしれない。実際、防除の関係者は、「問題が起こりゃしないか」とすごく心配していたものだ(もちろん、心配が去ったわけではないが・・・)。忘れてはならないのは、もともとこの制度は、決して農薬の使用を否定しているものではなく、今まで通り使用基準を守って正しく使っていれば何の問題もないということである。それよりも、今まで規制にかけることができなかった化学物質も取り締まることができるようになったこと、国内農産物の安全性をアピールできる絶好の機会となったこと、などメリットも大きいのではないかとトンボは思う。とはいえ、農家の段階ではやっぱり、他作物への飛散など、今までよりも散布時に気をつけなければならない点が増えるなど、苦労が増しているのも事実である。
 「今までより気をつけろ!」と言葉でいうのは簡単だが、実際には、「飛ばないように気をつけろ!」だとか「隣の作物にも基準がある農薬を使え」といわれたって、「いつ何時風が吹くかわかりゃしないじゃないか」、「どうやって調べればいいのかい?」といった声がトンボには聞こえてくる。
 そりゃそうだ。今までだって、基準を守って散布していたのに、今までと同じじゃだめだと言われたって、何をどうすればいいのか見当もつかないのではないだろうか。けれども、病害虫・雑草が暴れるのを我慢してくれれば別だが、防除をしなきゃならんという現実がある以上、規制にひっかからないようきちんと対処しなければならない。規制が強化されたのは事実であり、避けようのない現実なのである。なので、ポジティブリスト制度に怯えるのではなく、国産農産物の優位性や安全性をアピールする絶好のチャンスだと、それこそ「ポジティブ」に考えて、安全防除により一層の磨きをかけてみてはどうだろうか。
 そのためには、まずは、制度のことをよく理解して、自分のほ場とその周りをよく把握して、自分が使っている農薬が隣の作物で登録があるかないかや、自分のほ場で散布した時の隣への飛散程度など、可能な限りの情報を集めて丁寧に分析することが必要だ。調べた情報が詳細であればあるほど、対処方法を見つけやすくなるものである。
 例えば、防風ネットを張るのが手っとり早い方法だと分かっていても、費用面で折り合いがつかないならば、飛散の少ないノズルに変えるとか、風向きが隣から自分のほ場に向かう時間帯を狙って散布するとか、現実に今まで効率よく防除できていた防除体系があれば、わざわざ使う農薬を変更しなくても、散布法の工夫次第でうまくいく場合もあるはずで、つきつめていけば、低コストでそれぞれのほ場に最適な方法が必ずあるはずである。
 対処方法を見つけるのに最初は苦労することもあるだろうが、このような苦労は必ず報われるものである。是非この機会に、自分の行っていた防除を十分に点検・見直しをし、最適な安全防除法を見つけていただきたいとトンボは祈っている。そして、わからないことがあれば、仲間の農家やJA、指導機関など詳しい人にどんどん相談しよう。自分の知識だけで判断すると、思わぬ落とし穴に落ちる時があるので、注意したい。 (田端とんぼ)

(2006.8.29)



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