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コラム


同志よ、さらば

 全農の鈴木常務が逝った。入会年度は1年前後しているが、共に30数年、米業務に携わってきた。憚りながら同志と呼ばせてもらう。

 同志が亡くなった翌10月20日、全農は来年3月に全農との統合をめざす21経済連と合併契約調印を行なった。先の6経済連と併せ、27経済連との統合が実現し、いよいよ「新全農」の誕生である。

 9月末、自主流通米の価格低落対策として、政府備蓄米75万トンの市場隔離、40万トンの政府買入れ、来年の転作の拡大などを柱にした緊急総合米対策が決定した。また、各産地の売り急ぎやリベートの禁止をきつく戒める声明が国、JAグループのトップから出された。もちろん、このシナリオづくりに同志が奔走したのは言うまでもない。

 思えば、同志の「ダム理論」は有名。計画給水を行なうには、きちんとダムに水を貯めるのが先決。米も然り。まずJAが米の全量集荷する、ダムに米を貯める。それができて初めて計画的な販売ができると、眼光炯々に語るありし日の姿が目に浮かぶ。

 集荷が先か、販売が先かは論が分かれるところ。同志はJAグループの力、かつての一枚岩の結束を信じた。食糧法になってから米の流通が乱れ、ダムから水が漏れ、価格は下がる、産地はリベートを払ってでも売り急ぐ。同志はこれに果敢に闘った。国に対策を求め、JAグループにはその愚を懸命に説いた。その志半ばで倒れた。

 全農は2002年の第3次統合後は、大多数の経済連と合併する。こうなれば、過度な産地間競争もリベート合戦も無意味。同志がめざした「組織的な米の集荷」「米の計画的な販売と価格の回復」が否応なしに実現できたのにと思うと、いかにも早すぎる死だ。

 通夜はもの凄い雨、「涙雨」にしては激しすぎる。きっと、JAグループの米事業の行く末を心配して天国で慟哭しているにちがいない。同志の涙を無駄にしてはなるまい。

 さらば同志よ、安らかに眠りたまえ。       (だだっ児)



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