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コラム


ポンペイの悲劇

 9月1日は「防災の日」。その日未明、不夜城と呼ばれる新宿・歌舞伎町の雑居ビルが火災。44人の死亡者を出す大惨事が起きた。ずさんな防火管理上の不備が被害を拡大したようだ。折しもこの日は三宅島の全島避難から丁度1年になる。
 「天災は忘れた頃にやってくる」どころか、この10年程で雲仙・普賢岳の火砕流、阪神大震災、有珠山・三宅島の火山噴火、東海地方の豪雨、鳥取県西部地震、芸予地震と次から次にこの狭い日本列島を災害が襲う。
 先日、江戸東京博物館で行なわれている「世界遺産 ポンペイ展」を見にいった。たいへんな人出。西暦79年、1万数千人が住んでいた古代都市ポンペイ。火山噴火により地中に埋没したそのポンペイの町並が、2000年の歳月を経てそっくり掘りおこされたのだから、たしかに一見の価値がある。
 そこには、公共広場を中心とした公共地区、商業地区、居住区などに分かれた整然とした町並み。公共浴場、劇場、2万人収容の円形闘技場、一般の家屋4000軒、30軒のパン屋や数多くの居酒屋があったという。そこに無かったのは、電気、ガス、自動車、放送メディアぐらいで、今とすこしも遜色のない豊かな暮らしぶりだったというから驚く。
 この古代ローマの文化都市が火山の噴火で一瞬にして地中に埋没した。なんでも、火山のふもとにあるポンペイ付近はしばしば災害に見舞われていたが、被害があまり大きくなかったので、その恐ろしさを忘れていたとも言われている。
 現代は古代ローマ時代と比べて、人間は大して進歩していないが科学は格段に進歩していよう。でも逆に現代は、予知の精度が高まるにつれ、予知情報におののく度合いも高まっている。先日の東京都の防災訓練で石原知事が「敗戦後、米軍の横田基地を使用したのは俺がはじめてだ」と気炎をあげるぐらいの認識では、国民は安心できない。
 昔から言い古されてきた「地震、雷、火事、親父(?)」を日常肝に銘じ、「世界遺産 日本」にならないよう祈るだけなのだろうか…。   (だだっ児)


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