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コラム


「コメの虫」

 もし、今の世で核戦争が起きても「ゴキブリとヘレン・クラークは生き残る」とある新聞に載っていた。両方とも「タフ、強い、冷徹」だからとある(クラークとはニュージーランドの首相で、日本の調査捕鯨を強烈に批判している人物)。
 9月も末になると、田んぼの稲はコンバインで刈り取られ、食卓は新米で賑わうことになるが、大部分のおコメはJAの倉庫で保管される。買い手から注文がくるまで、JAは入庫したおコメの品質を維持する責任がある。なぜなら、倉庫に入っているおコメは政府や生産者から預かった品物だからである。
 大敵は害虫。なかでも、コクゾウはコメにつく害虫で、ゴキブリ同様、タフで強く、繁殖力が旺盛。「コメから虫がわく」のたとえのように、コメ粒のなかで卵から幼虫になり、成虫になって這い出す。したがって、どんな立派な倉庫(ふつう夏場は、15度以下で保管できる低温倉庫)で保管していても、コメについた虫は、なかなか死滅しない。
 そのため、昔はコメに直接くん蒸して、害虫駆除をしていたが、現在は禁止されている。倉庫の保管担当者にしてみれば、おいそれとくん蒸はできないし、HACCP・ISOなどの衛生管理システムが普及する中で、虫のついたコメを出そうものなら運賃自分持ちで返品となり、途方にくれてしまう。
 「金鳥」という蚊とり線香がある。息の長いベストセラー商品。メーカーは、これまた「大日本除虫菊株式会社」と歴史を感じさせる。この除虫菊は名前のとおり、昔から、殺虫剤として、コメでも「PGP」の商品名で使われてきた。これは人畜無害、農作物になんら薬害はないという代物。原料の除虫菊は戦前、北海道や瀬戸内海地方で盛んに栽培されていたが、今では、遠く、アフリカのケニアやコンゴまで求めないとないそうだ。
 どうやら今の「金鳥」の中身は化学化合物で、香だけに除虫菊を使っているとか。おコメの転作手法として、面積から数量割り当てが検討されているが、転作作物として、この除虫菊を奨励してはどうだろう。武部農相、あまり難しいコメ改革はやめて、地元でまず除虫菊を復活させては……。     (だだっ児)



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