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コラム


動物福祉

 すき焼きは、日本独特の肉の食べ方らしい。それは、わが国特有の調味料である醤油と豊富な野菜の存在が大きい。もう一つは、霜降りの入った和牛肉は、そのエキスが汁に流れて、肉が固くなるのを防ぐ役目をもっているという。
 先日の日曜日、久しぶりに家族全員が集合。たまには、すき焼きでもとなったが、問題は狂牛病の最中、牛肉が手に入るかどうか。案の定、いつも行くスーパーには無い。今日は豚すきかと思いながら、少し遠くのスーパーを覗くとやっと並んでいた。
 その「狂牛病」問題。ネーミングそのものが気持ちが悪く、消費者が牛肉に手を出す気になれないのはよくわかる。この病気は「近代畜産が生み出した強制的共食い」とも言われるように、そもそも草食動物である牛に、同類の牛を含めた「肉や骨」・「肉骨粉」を食べさせて育てたのが原因というから天罰ものかも知れない。
 今、ヨーロッパでは、先の狂牛病騒動等の反省から、アニマルウエルフエア(動物福祉)という日本ではあまり聞き慣れない運動が進んでいる。その意味は、消費者の「安全」なものを食べたいという原点から、農業のあり方を見直そう。農業は作物や家畜を「つくる」ことではなく、「育てる」こと。そうした環境で育った健康な家畜こそが消費者の求める「安全」につながる、という考え方のようである。
 「近江牛」「松阪牛」「神戸牛」が日本3大ブランド。前沢牛、米沢牛、仙台牛、上州牛、信州牛、飛騨牛、佐賀牛、五島牛……と、全国どこに行っても美味しい牛肉がある。スーパーに並ぶオージー(オーストラリア)牛やらアメリカ牛に伍して、これら国産牛が「美味しそうに」かつ、一際「高い値段」で鎮座していた。
 多くの消費者の選択基準は「国産だから安全・安心」。それが今回の騒動で、「国産は安全」の“神話”が崩れつつある。ヨーロッパが動物福祉の観点から農業のあり方を見直しているように、日本農業も耕畜連携運動、すなわち稲わらや飼料稲の活用など、稲作と畜産の連携を強める好機であろう。いつまでも「人の噂も75日」は通用しない。(だだっ児)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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