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コラム


五輪のアスリートたち

 「原田、立て!立て!立った!」。逆転優勝を飾った長野五輪ジャンプ団体戦。あの原田選手の大ジャンプはソルトレーク冬季五輪ではみられなかった。それでも、原田は「必ず日本ジャンプ陣は世界のトップを競う力をつけて戻ってくる」と笑顔で誓う。「スマイリー・ハラダ」は健在なり。
 原田選手の所属する雪印グループは、相次ぐ不祥事で瀕死の状態。原田の心も揺らぐが、「人間が苦難に直面した時、深刻に悩むより笑顔のほうが、次への道が開けてくる」と、笑顔の効用を語る。こんな素晴らしいアスリート(競技者)を広告塔にもちながら、雪印食品解散の報は、残念でならない。
 もう一人、男子スピードスケート500メートルの清水選手。惜しくも今大会は銀メダルに終わったが、腰痛と戦った今シーズンから「あきらめることの無意味さを学んだ」。「投げ出しても何もつかめない。長野の金メダルよりも、今回の銀メダルのほうが、アスリートとしての成長の糧になる」と、痛みから逃げずに戦った五輪を振り返る。清水こそ、真のアスリート。
 「長野のシンデレラ」の里谷多英。スキー女子モーグルで、2大会連続のメダルとなる「銅」を獲得した。「なぜ、里谷は五輪になると力を発揮できるのか」という記者の問いに、彼女のコーチは「彼女の心の窓が開いている時間は1日で30分しかない」と答えていた。意味がよく分からないと思っていたら、ある新聞に「多英は五輪の前になると『超まじめ』になる」と書かれていた。彼女は、どうやら、長くは集中力が続かないタイプらしい。いや、いや、なかなかどうして、勝負強い現代っ子アスリートだ。
 狂牛病の影響で、焼肉店はSOS。その業界に久しぶりに光がさしたという。それは里谷選手が帰国後、「焼肉が食べたい」と話したことがきっかけ。農水省の職員ですら「大臣が言うより何倍も効果がある」と、絶賛するしまつ。
 多英ちゃんのメダルは、長野の「金」以上に輝いている。   (だだっ児)


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