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コラム


ペイオフ

 最近、気になることがある。コンプライアンス、ワークシェアリング、ペイオフ……カタカナの氾濫である。それぞれ、法令遵守、仕事の分かち合い、ペイオフは“預金保険制度”の意味らしい。
 なぜ、こんな外来語を頻繁に使うのだろう。たぶん、ベースボールを野球というほど、まだ熟した言葉がみつからないせいだろうと思う。コンプライアンスやワークシェアリングは日本語の意味がわからなくても、生活には大して支障はないが、ペイオフはどうもそう簡単ではないようだ。
 ペイオフの具体的な意味は「金融機関が破綻した場合、金融機関が預金保険機構に積み立てている保険金で、破綻した金融機関の預金者に一定額の払い戻しを行なう制度」とある。もっと、具体的には、その払い戻しの上限は、預金者1人当たり元本1000万円とその利息までは保護されるが、4月1日のペイオフ解禁後は、金融機関が破綻した場合は、それ以上は切り捨てられるという物騒な話である。
 健康食品の販売をカタル会社に、何百万円、何千万円ものお金を出資する人がいるご時勢だから、もっている人はもっているのだろうが、自分に照らすと、1行どころか、何行あわせても1000万円にはどんなに逆立ちしても及ばないから、個人的には関係ない話。
 が、この制度は企業はもちろん、地方公共団体も、マンション管理組合の修繕積立金にまでも適用されるというから、世の中に与えるインパクトは大きい。企業と取引している銀行が破綻した場合、その企業も倒産、従業員も路頭に迷うという危険を胎んでいる。
 「日本人はリスクを嫌う」民族といわれる。1400兆円もの個人金融資産のうち、現金・預金の割合が53%、保険・年金が28%も占めているという。きわめて、健全・温厚な農耕民族の表れ。それをリスクのともなう株や投資信託などに向かわせ、不況から抜け出そうという国の魂胆だろう。
 「額に汗して働け、株には手を出すな」、「お金にはきれいに処せ」という日本人の美徳は今や過去のものになろうとしている。めんどうな世の中になったものだ。(だだっ児)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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