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コラム


チンチン弁当

 『はじめチョロチョロ なかパッパ 赤子が泣いても ふたとるな』。昔(?)、ご飯をカマドで炊いていたときの火加減のコツ。その炊飯の極意も、炊飯器の登場で不要になったが、コメのとぎかた、水加減がご飯の炊き上がりを左右する。
 そこに、とがずに炊ける無洗米が登場、急速に伸びている。消費者にとって、洗米の手間がいらない「魔法の米」に映るらしい。コメを炊飯して食べるのは日本独特の食文化。他の国ではコメを蒸したり、炒めたりして食べるので洗米をしないのが普通。
 コメを洗うことをとぐ、漢字で「研ぐ」と書くが、そのために水を使う。洗う、研ぐは日本人の清潔感を表す習慣のように思えるが、洗米は面倒、栄養が逃げる、水が冷たい、手が荒れる、環境に負荷がある……などが無洗米普及の理由らしい。
 おいしいご飯の炊きかたは、まず、コメを洗って、水に浸ける。無洗米の登場はここまでの手間を無くしたが、炊飯の手間までは省けない。ところが、遠からず、家庭でご飯を炊かない時代がやって来るという。
 先日、この欄で冷凍米飯を手がける元気印のJAグループの関連会社を紹介した。社長曰く、「これからはご飯を買う時代がやってくる」。おいしい銘柄米を冷凍米飯(白飯)にして、スーパーやコンビニに並べる。これを家庭では必要なだけ買って冷凍庫に保管し、電子レンジでチンして食べる。もちろん、副食も調理済みの総菜。
 今、幼稚園児の間で「チンチン弁当」なるものが流行っているそうだ。まさか、ピラフや炊き込みご飯の冷凍米飯を電子レンジでチンして弁当箱に詰めるわけではないだろう。それとも、コンビニから弁当を買ってきて、そのままチンして持たせるからチンチン弁当というのだろうか。どうも後者のような……。
 たしかに、核家族化や、女性の社会進出、高齢化がすすみ、家庭で調理する時間や手間をかけられない、いや、かける必要がない人たちが増えている。どうやら、ご飯を「炊く」時代から、ご飯を「買う」時代が着実にきているようだ。いやはや、なんとも味気ない時代になったものだ。(だだっ児)


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