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コラム


「生産調整」のゆくえ

 5月の連休明け、大阪へ出張。途中、車窓からの景色に違和感を覚える。満々と水を張った田んぼの傍らで、麦が真っ黄色に熟れている。田んぼに、「田植え」と「麦秋」、「青」と「黄色」が交錯する奇妙な光景。車窓から見える麦は転作作物。田んぼは、今、日本農業が置かれている現実の姿を映しだしている。
 こんな光景をよそに、今、米の生産調整に関する論議が食糧庁の設置した「生産調整研究会」で行われている。3つの専門部会が設置され、生産調整のみならず、農協の米事業の改革にまで及ぶ幅広い論議が展開されている。
 食糧法になってから、6、7年の間に食糧行政がすっかり変わった。政府米は備蓄用しか買いません。麦も民間流通、米麦の検査も民営化ですよ、と国の仕事を次から次に縮小。あと残る懸案事項は、米の生産調整の推進というわけだ。それを何も仕事のなくなった食糧庁の出先である地方の食糧事務所にやらせようとの魂胆らしい。
 過去、30年間も生産調整をつづけて、日本農業に一体何をもたらしたのだろうか。水田面積の40%にも及ぶ減反を行っても、米価は守れず、「農家の数だけの不公平感」をもたらしただけ。また、水田農業の活性化を失わせ、唯一、国内生産で需給できる米のマーケットを狭め、米生産の縮小均衡を促す下策以外のなにものでもなかったようだ。
 ここまで米の値段が下がったら、怖いものはない。8000円だろうが、9000円だろうが、日本の水田には全部米をつくる。加工用、業務用、飼料用どんな用途にでも供給。農家への清算は、JAお得意の共同計算で不公平無し。ともあれ、米の生産調整のゆくえは、日本農業の核たる水田農業がどうなるかの鍵を握る。それこそ、今は、日本農業の「有事」の事態なのかもしれない。
 そんな中、5月29日、JAビルで「農協人文化賞」の表彰式が例年どおり開催される。この農協人文化賞は、今年で24回を数えるが、「JA」ではなく、「農協」を頑として使っているところが実にいい。やっぱり、農協はJAではなく、「農協」が似合う。
 受賞者の皆さんの業績は、限りない農協運動の貴重な財産。おめでとうございます。
(だだっ児)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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