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コラム


「農」が消える・・・

 サッカーW杯は、「大五郎カット」のロナウドの活躍でブラジルが優勝した。近所の田んぼも田植えから2カ月、ひ弱な苗がアッという間に黒々と成長。そんな中、米政策の抜本的見直しを議論してきた食糧庁の生産調整研究会が「中間とりまとめ」を行った。
 焦点の生産調整の手法は「生産数量配分」に変更し、生産調整の参加・不参加は生産者の「自己判断」、過剰米処理は生産者の「自己責任」が基本とある。しかも「売れる米づくり」が、米づくりの本来のあるべき姿と強調し、そのために、JAグループの米事業を見直すべきだとまで言及している。
 この中間とりまとめは、本来、国が担うべき「主食である米」の需給調整を回避し、市場経済に米を放り投げる姿勢が見え見え。米づくりの責任を全て「生産者」に押しつけ、JAグループには仮渡金や共同計算などの手助けは無用という。ついこの間、「米百俵」の精神とやらで、農耕民族を意識させておきながら、じつに危険な道への誘導だ。
 国、農水省のねらいは、中小農家の淘汰。米づくりを「市場原理」に任せ、作り過ぎて価格が下落しても「自己責任」、どうぞ米づくりから撤退してください、というわけだ。どうやら、これは農水省の「『食』と『農』の再生プラン」の工程表(農業界にはなじまないことば?)にいう、2010年に40万程度の「効率的で安定的な経営体」にわが国の農業を担わせようとする地ならしと思われる。
 それにしても、農村を疲弊させた米の生産調整の行方を、そして、主食である米の生産・流通のあり方を、たかが食糧庁長官の私的な研究会で舵取りをさせていいものだろうか。多勢に無勢か、生産者側の委員の声も小さい。
 日本農業といえば、たしかに米に代表される。その米の消費が減って行きづまっているのも事実。その一方で、麦類・大豆・トウモロコシ・飼料用雑穀等を3千万トン以上も輸入している国。穀物自給率がたったの27%の国だ。いくらでも、世界に冠たる水田農業を活用し、自給率を向上させることができる。
 一歩距離を置いてながめれば、日本農業は限りない飛躍の可能性をもっている。そのための、工程表ならいくらでも歓迎。農が消える工程表は断じて許せない。 (だだっ児)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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