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コラム
 

老人天国?

 のっけから、私事で恐縮だが、10月の始め、82歳になる母親が死線をさまよった。医者からは「手遅れ、今日か明日の命です」と言われ、一時は死を覚悟。しかし、さすがは近代医学。腎臓が炎症を起こし、尿道が詰まっているのが分かり、医者は「危険はともなうが、ステント(カテーテルのようなもの)を尿道に挿入できれば、助かるかもしれない」と言う。この措置がうまくいき、どうやら母は黄泉路から戻った。
 このステントなるものは、この世界では、ごく当たり前の医療器具のようだ。例えば、心筋梗塞の場合、血管にこのステントを挿入する措置をするそうだし、近々には、脳の血管にも挿入できるものもできるらしい(10月5日、NHKスペシャル)。
 こんな騒動のお陰で、近頃の近代的な病院を見ることができた。この病院はJR常磐線・U駅の郊外にある。広大な敷地に、3つの病棟、レストラン・売店・理容室まで備え、まるでホテル並みの外観。病院は1000人も働いていようか。医者、看護婦、事務員、清掃する人などが、色ちがいのユニホーム姿できびきびと動いている。
 入院病棟は、圧倒的に高齢者、しかも女性が多い。同部屋には、はるさん93歳、ふで子さん90歳、80歳代はまだまだ若い(?)。日本は世界一の長寿国だが、実態は案外、このような手厚い医療制度に支えられているのかも。また、日本は高齢者の医療費が世界一高いといわれる。そのためか、どの健保も赤字財政。世界一の長寿国で、医療費の自己負担が無料(10月から1割負担)では、当然の成り行き。
 そのお年寄りは、個人金融資産1400兆円の半分を持つお金持ち。それなのに、60歳以上の世代に年間40兆円以上の年金をつぎ込み、医療費にいたっては、年間30兆円のうち、10兆円も高齢者にかかっているという。この世は、まさに老人天国?
 政府も高齢者の資産をはきださせるため、生前贈与の相続税の減税など躍起。しかし、お年寄りに言わせれば、「医者にかかれば金はかかる」「子どもには迷惑をかけたくない」、よって、「お金」だけが頼りとなり、財布の紐は一向に緩まない。
 このままでは、お年寄りで日本丸沈没。同僚曰く、「お年寄りの預金利息を優遇すれば、お金を使うようになるかも」。何か、妙な世の中だ。(だだっ児)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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