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コラム
 

米の保管を科学する

 『「お米の買い手さんは、これからは、田んぼではなく、倉庫を見せてください」「米と一緒に保管管理日誌を送ってください」という、話も出ていますよ』
 米は、1年間を通して消費されるので、出来秋に収穫された米は、農産物検査で1〜3等の格付けされた後、JAの倉庫で保管される。出庫まで、虫やカビ、ネズミの被害にあわないように、倉庫担当者は管理しなければならない。
 もう1つの問題は、米の古米化を防ぐことである。「米は生きている」ので、人間と同じように、呼吸する。とくに、米の水分が多く、穀温が高いほど、この呼吸量が多くなり、自己消耗、すなわち古米化がすすむ。
 米の古米化を防ぐ、カビ・害虫などを発生させないためには、倉庫内の温湿度管理が重要になる。このため、倉庫の担当者は、毎日、定時に倉庫内外の温度・湿度、穀温を測定し、保管管理日誌に記帳し、品質管理に努めている。
 ただ、残念なことに倉庫内の温湿度の測定は、昔ながらの乾湿計を使用しているところが多い。いかんせん、この乾湿計は典型的なアナログ方式。とくに、湿度の測定は、直接○○%と表示されず、乾球と湿球の温度差で湿度換算しなければならない面倒さと、読み取り誤差を生じやすい欠点がある。
 昨今、BSE騒動や虚偽表示の問題から、「食の安全」に対する社会的意識が高まり、米とて例外ではなく、トレーサビリティ(生産履歴の遡及)の確立が求められる。種子更新率や施肥管理、病害虫防除などの生産段階のトレースなどもさることながら、販売流通の出発点となる倉庫での保管管理、すなわち「倉庫で米がどのように管理されていたのか」が問われる時代。
 今は、デジタル化時代。直接、数字で表される温湿度計がいくらでもある。また、センサーを倉庫内に設置すれば、温湿度データが事務所のパソコンに送られ、遠隔地にいても監視できるシステムまである。
 冒頭は、全農の県本部で、JAの倉庫を巡回指導している指導員の話。JAの倉庫担当者は、従来は、縁の下の力持ち。とんだことで、脚光を浴びることになったが、米の保管も科学する時代がきたようだ。でも、いくら保管を科学したところで、害虫やカビの発生までは、機械では見つけられない。くれぐれも、手抜き管理にならないように・・・・。  (だだっ児)


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