JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします

コラム
 

「さぬきの夢・・・」

 村上春樹氏の小説「海辺のカフカ」のモデル地探しが、舞台の香川・高松市でブームになっているそうだ。主人公の田村カフカが「駅前で、食べたうどん屋はどこか」という、謎解き。讃岐うどんは、今や、全国ブーム、その地に昨年の暮れ、お邪魔した。
 香川のJA組織は、今のところ、2JAを残してはいるが、12年4月に、県JAを実現している。香川の農協人といえば、全中会長もした故宮脇朝男氏。氏が県単一農協を提唱したのが、昭和46年というから、ここまで30年の道程。
 また、氏は、当時「農協食管構想」をぶち上げた人でもある。米の管理を国から農協主導にしようとする、当時としては、極めて、大胆な発想。残念ながら、この構想は、その後の石油ショック、インフレで立ち消えになってしまった。
 昨年の米政策改革で、農業者・農業団体は、はからずも米需給調整の主役に祭り上げられた。これも一見、宮脇氏の構想が30年かかって、実現したかのように見えるが、中身は大違い。規制緩和、市場主義経済政策を日本農業の砦である米の世界に強引に持ち込み、無理やり主役の座にすわらされたのである。
 今後の米流通システム、誰が米を集め、誰が売るのだろう。全農は、米事業改革の柱として、「販売を起点とした事業方式への転換」を唱える。米の需要情報をしっかり把握し、それを生産者に伝達し、そこから生産・集荷がはじまる、という考え。全農のことだから、しっかりした具対策はあるのだろうが、これだけでは今後の方向は全然分からない。
 しかも、今回の改革で、全農は自主流通指定法人という看板を失い、ただの一売手になったようだ。だとすると、今後の米販売は、全国のJA、経済連、県本部、そして全農が横一線で販売競争することになるのだろうか。
 秩序ある・整然とした米流通システム、農業者・農業団体が真に主役になる、前述の宮脇氏の言葉を借りれば、「新農協食管構想」なるものを早急に描かないと、200万農家が路頭に迷うことになる。
 香川県農試が開発した、うどん用小麦「さぬきの夢2000」を原料にした讃岐うどんをごちそうになりながら、つらつら米の行く末を案じた次第。 (だだっ児)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp