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コラム
 

骨なし魚と無洗米

 フーズ&ヘルス研究所・幕内秀夫さんが、共同組合通信に、『理解に苦しむ「米粉パン」』というコラムを寄せられていた。今、各地で、米の消費拡大の一環として、学校給食用に米粉パンの開発・普及に力を入れているが、幕内さんは、米粉パンは米の消費拡大につながらないと断じる。
 氏はパンには、味噌も醤油も国産の野菜も、魚介類も合わない。佃煮も納豆も、お茶も合わない。米の良さは、ご飯という「粒食」にこそ意味がある。米粉パンの味を覚えた子供たちは、将来、輸入小麦粉でできたふわふわのパンを好むだろう、と警告する。
 米の関係者にすれば、米飯給食がすすまないなら、せめて小麦粉パンを米粉パンにと考えるのが普通だが、どうやらこれは短絡的な思考のようだ。たしかに、米粉パンでは、味噌汁も魚も、野菜の煮物も似合わない。もっと、心配なことはパンでは、子供たちが「はしの文化」を忘れることだ。
 さらに、最近、気になることがある。骨なし魚と無洗米。骨なし魚とは、骨を抜いた魚。サンマで言えば、頭をとり、背骨をとるため三枚に下ろし、両身を接着剤で貼り合わせ、元の魚の形に戻す。小骨はピンセットで全て抜く。この作業は、人件費の安い中国やタイで行われている。今のところ、病院や老人ホームなどで人気だそうだが、これが家庭や学校で広まることを考えると、何か恐ろしい。
 無洗米は、米業界では久々のヒット商品。家庭にも随分普及している。キャッチフレーズは「環境に優しい」「水が節約できる」「冷たい水に触れなくても良い」などだが、一番は字の如く、「洗う手間」が省けることだろう。でも、専門家に言わせれば、美味しいご飯を食べるコツは「洗う」ことだという。洗う3分の手間を惜しんで、ご飯の美味しさを忘れることになる。
 骨なし魚も無洗米も、簡便性を求めるがあまり、「食と農・漁」の関係を考えなくなり、結局は元も子もなくしてしまうような気がする。「国民の米離れが魚離れを呼んだ」と言われるが、これらの登場は、ますます、米離れ、魚離れを招きそうだ。
 神田で、昼食によく利用する一膳飯屋がある。焼き魚、わかめのたくさん入った味噌汁、ひじき、どんぶりご飯で700円也。これが究極の和食!テレビの「隠れ家ごはん!」も高いギャラのタレントを使わずに、こんな店・隠れ家でも紹介したら・・・。(だだっ児)


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