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コラム
 

除虫菊は農薬?

 先日、近所のスーパーに行くと、グレープフルーツが1個78円で特売。隣の売場では、青森産りんご「さんふじ」が同じ値段で並ぶ。主婦の手は圧倒的にグレープフルーツに伸びている。コーティングのせいか、色鮮やか、艶々。りんごより美味しそうに見える。
 しかし、このグレープフルーツの姿、形は自然美でなく、人工美。しかも、カリフォルニアから、どうやって運んできたのか知らないが、国産のりんごと同じ値段とは摩訶不思議。値札をよくみると、防カビ剤使用と小さくその薬品名が書かれている。たしかに、防カビ剤でも使わなければ、日本まできて、こんな姿・形が維持できるはずがない、と妙に納得。この態だと、日本のスーパーに並べられるまで、どんな農薬が使われているか知れたものでない、と思う間に、女房の手が伸びる。
 昨年夏の無登録農薬問題がきっかけで、この3月10日から、改正農薬取締法が施行される。問題は、法律で新設される「特定農薬」。一時は、アイガモにスズメ、コイや蛙、牛乳、酒、コーヒーまで、指定されるとかで大騒ぎ。水田の草をとるアイガモが農薬なら、草とり上手なうちのかあちゃんも農薬か(02・12・26日本農業新聞)と皮肉られる始末。結局は、農薬の効果があり、安全性にも問題のない「特定農薬」として、重曹・食酢・地域の天敵の3つだけが指定されることになったが、これらが農薬なの?
 BSE、大手乳業の食中毒事件以来、ISO・トレーサビリティ・農薬問題と、「食の安全」への関心は日増しにエスカレート。確かに、「食」は「人に良い」と書くように、安全は第一義。しかし、農家の知恵が生んだ先の「特定農薬」論議はナンセンスだし、土台、どんな薬にも反作用がある。要は農家の正しい使い方と消費者の農薬に対する理解と学習。薬なくして、人間は生きられないように、農薬なくして農産物は害虫から守れない。うちの女房のような無知は許されない。
 話は変わるが、かつて日本には「除虫菊」が、北海道や瀬戸内海で随分多く栽培されていたそうだ。「除虫菊」、名前のとおり、農作物に害を与えず、人畜無害の殺虫剤原料。残念ながら、今は蚊取り線香で有名な「金鳥」のメーカーが「大日本除虫菊株式会社」と、その名をとどめるのみ。転作田に除虫菊栽培を復活させ、米の大敵・コクゾウ虫を倉庫から追い出したいものだ。ところで、除虫菊は農薬?(だだっ児) (2003.2.25)


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