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コラム
 

食糧庁が消える理由(わけ)

 この7月から、食糧庁が廃止される。各地方にある食糧事務所も廃止になり、地方農政局の下で、食品のリスク管理業務を中心に主要食糧業務を併せ行う地方農政事務所として再スタートする。これまで、生産者に向けていた顔をくるりと、消費者に向けるわけだ。
 農水省の組織改正は、「消費者を重視した農林水産行政を確立するため…」とあるように、一昨年のBSE問題が、永らく国の食糧行政を担ってきた食糧庁を廃止させ、しかも、米麦等の検査業務など、JAの指導・監督に力を発揮してきた地方食糧事務所が生産者から消費者に軸足を置く組織に再編される事態にまで追い込んだ。
 気がかりなのは、食糧庁廃止後の全農の米穀事業の行く末。昨年の米穀政策改革、そして今国会の改正食糧法で、米流通が大きく変わる。とりわけ、全農が背負っていた自主流通指定法人の看板がはずされるが、このインパクトは大きい。“指定法人”、いうならば、大卸的存在で、基本的には、自主流通米は全農に一元集荷されるので、卸は全農に注文するだけでよかったが、これからは、卸も直接JAに出向き米を仕入れる動きが活発になるだろう。
 また、現行の計画流通制度が廃止され、政府米も自主米もなくなる。そこで、JAグループで取り扱う米は“JA米”とのことだが、JA米の全部が全部、全農に集荷、販売委託されるとは考えにくい。JAが直接売る米、県段階で売る米、全農に販売委託する米など、流通ルートが極めて複雑になり、収拾のつかない事態も予想される。
 食糧庁が廃止になる直接のきっかけは、BSE問題だが、麦の民間流通、あるいは農産物検査の民営化など、それは遅かれ早かれ、規定路線。いうならば、食糧庁なり食糧事務所の役割、機能がなくなったからともいえる。翻って考えると、全農の役割、機能も何やら怪しい。国の自主米価格センターの設置で、とっくに全農は価格交渉権を失い、かろうじて代金回収機能をもつだけ。そんな全農に米がやすやす集まるとも思えない。
 それとも、JAが直接売って、品代金が焦げ付き、「やっぱり全農だ」というのを待つつもりなのだろうか。食糧庁がなくなるなら、何も米の価格も国の価格センターで決めなくてもいい。全農が、独自に価格センターを設ける、品代金の補償も任せなさいという、積極的な姿勢が必要なのでは。でないと、今度は全農が消える…。(だだっ児) (2003.3.18)


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