農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

「天花」

 「米も、人も、心を込めて慈しむから育つ」。NHK朝の連続テレビ小説「天花」でヒロイン天花(藤澤恵麻)の祖父・信一郎(財津一郎)が田植えのシーンで言ったセリフ。この朝ドラの作者・竹山洋氏が79才になる母親に「今度、朝ドラに宮城県の米づくり農家の娘が保育士になる物語を書くよ」と言うと、「お米と赤ちゃんは、国の基本だから」と返ってきたという。さすが、お袋世代。
 「天花」の舞台「杜の都」仙台を8月末、仕事で訪れたが、JAの米担当者は昨年とは大違いの明るい顔を見せる。顔…先日、日本農業新聞のコラム「展望台」で懐かしい顔に出会った。写真には「熊本県の農家・吉田照さん」とある。知り合ったのは、吉田さんが現役の組合長時代。
 そのコラムには、渾身の力を込めて、農家としての声を寄せている。産業組合発足以来100年余、先人たちは、「一人は万人のために…」を合言葉に、協同の力でむらと農業を守ってきた。故にこそ山紫水明の国土がある。汗と涙によって築かれたかけがえのない遺産である、ではじまるが、農政の方向づけと生産現場との乖離と矛盾を強く訴えている。
 特に、新基本計画の中間論点整理で、担い手に集落営農を位置づけるにあたって、経理の一元化、法人化などの条件で、ハードルを高くすることは経済の論理で、むらの論理ではないときっぱり。たしかに、新基本計画の目玉である「経営安定対策」(日本型直接支払い)を「プロ農家」「大規模農家」に重点的に配分する方向は、吉田さんがいうまでもなく、集落営農や小規模農家を基盤とする日本の大方の地域とは相容れないところであろう。
 また、今回両論併記となった、株式会社の農地取得問題や、株式会社への農地貸借の全国展開云々という論理も、吉田さんに言わせれば、むらの連帯を分断する由々しき問題と映るであろう。何しろ、組合長時代、カントリーエレベーター(CE)を核とした集落営農を確立し、二度も優良CEの農水大臣賞に輝いた、むらづくりの実践者。その主張に揺るぎない確信と信念がほとばしる。
 集落営農、むらづくりの核は、やはり「米づくり」。朝ドラ「天花」、天から授けられた花とは「米」のことに違いない。今、日本人に欠けているのは、冒頭の「お米と赤ちゃんは国の基本」という思いと、これを「慈しむ心」だろう。(だだっ児)

(2004.9.17)

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