農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
JAの力が試される

 「災」の年を締めくくるかのように、昨年末、スマトラ沖大地震と大津波がインド洋をとりまく国々に襲いかかった。死者の数が16万人を超えるという途方もない大惨事。「前例のない地球規模の大災害だ。空前の地球規模の対応を要する」と、国連のアナン事務総長が呼びかける。
 日本は5億ドルの無償援助を表明したが、「東アジア共同体構想」をかかげる国にしては欠けている視点がある。今回の被災国の多くは稲作文化を共有する国々。ならば、日本のあり余る米をこれらの国々に活かす方法の提案が欲しい。具体的には、かつて提唱された「東アジア米備蓄構想」の促進。
 日本は今、基本計画の見直しで、やれ経営所得安定対策だ、担い手はどうする、農産物の輸出促進だと、農政転換にやっきになっているが、敢えて言わせてもらえば、これはお釈迦様の手の平の論議。視野が国内にとどまっている限り、どんな立派な政策を描いても国のいう「強い農業づくり」には限界がある。
 平時でも飢餓人口が8億5千万人、その大半は米を主食とする東南アジアの人々。そして、不意に今回のように未曾有の大災害に襲われる。必要なのは東南アジア全体を見据えた米政策。それには、民主党が「農業再生プラン」で提案する米の棚上げ備蓄300万トンの実現が先決。何も直接支払いとかで、1兆円をばらまかなくてもいい、それで300万トンの米を国が毎年確実に買い上げる。これで農家は無理な生産調整に苦しまずにすみ、国民も安心が買える。
 棚上げ備蓄した米は、東アジア米備蓄構想の一環とし、自国の不測の事態や東アジア全体の大災害に備える。飢餓人口8億5千万人の支援に、あるいは自給飼料に使い健康な畜産物を提供する。MA米を援助に回すのも結構だが、もっと日本農業が生き返る、米を活かすスケールの大きい構想を提案してもらいたいものだ。
 過日の全国紙で、農機メーカーのクボタが一面を使って「たきたてのごはんは、ニッポンの資産かもしれない」と宣伝していたが、まさに米は、水田はこの国の資産。先人が築いたこの国の資産を最大限に活かしてこそ、日本が、世界が救われる。これには農業縮小政策に血眼になる政府や官僚に頼っていても前進はない。JAグループがその先頭に立とう。今こそ、日本の力、いや、JAの力が試されている。 (だだっ児) (2005.1.20)

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