農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

「黄金の国ニッポン」

 「黄金の国ジパング」。これはマルコポーロが「東方見聞録」で日本を紹介した記述。インターネットでつまみ読みをすると、「ジパングは…黄金は無尽蔵にある。宮殿の屋根はすべて黄金でふかれており…」とあり、ここでいう黄金は文字通り黄金の意味。当時の日本は世界有数の金産出国だったらしい。
 9月半ば、仙台―青森―秋田―山形庄内―福島と東北を列車で一周した。仙台・津軽・秋田・庄内平野は、今まさに「黄金の国」。田んぼが稲穂で黄金色に染まっている。そして広い。八郎潟付近の田んぼの広さに、乗り合わせた乗客も思わず感嘆の声をあげる。酒田から鈍行で新庄に出、そこから山形新幹線に乗り換える。天童、山形、高畠、米沢と田園光景が延々とつづく。
 持ち合わせていた新聞(毎日)を広げると、丁度、山形県高畠町の有機農業運動の取り組みが載っていた。農民詩人の星寛治の提唱で30年ほど前からスタート。当初は、田んぼの草とりに、四つんばいになって、這いずり回る姿をみて周囲からは「頭が可笑しくなった」とか、「嫁殺し農法」とまで陰口をたたかれ、散々だったそうだ。たしかに、この草取りは農家泣かせ。先ごろ、亡くなった母も農家出身。3年もの病院生活の間、辛かった昔を思いだすのか、窓から見える田んぼの光景には何の感慨も覚えない様子。
 ある年、東北一帯が厳しい冷夏に見舞われたが、この高畠町の有機農業に取り組むメンバーの水田だけは穂が実り、平年を上回る収量を上げたという。田んぼに地力がついた証拠である。星さんは「安全な食べ物をつくりたい。失われた環境を取り戻したい一心で取り組んできたが、地域社会から市民権が得られるまで10年かかった」と話している。今、町内の水田や小川には、メダカが泳ぎ、ホタルやトンボが乱舞するかっての光景がよみがえったそうだ。
 こんな懸命な農家の努力をよそに、今年は豊作基調とかで、作況100を超える過剰米を市場隔離する集荷円滑化対策を発動する見込み。たった10万トン足らずの米を市場隔離してどうする。アメリカのハリケーンで、飼料の輸出が一時止まり、備蓄飼料を緊急放出したはず。今に、飼料不足で牛肉も豚肉も食べられなくなるやも。小泉首相が先の選挙で「無党派層は宝の山」とかいったそうだが、この人の頭には「農は国の宝」という発想は一かけらもないようだ。水田を活かさなければ、「黄金の国ジパング」いや、ニッポンは消える。(だだっ児)

(2005.10.3)

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