農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂

ペットフードとコメの値段

 毎月末の日曜日、きまって近所のスーパーにでかける。お目当ては、ペットフードの特売だが、最近どうも割安感がない。たとえば、愛犬の好物ささみの缶詰1個が168円、これが2割引になったところで134円もする。犬の主食のドライフードを3袋、ほかに人間と同じようにおやつもいる。なにやかにやで樋口一葉のお札は軽く飛ぶ。
 8月のこの日は地元産の新米が店頭に並んだ。犬と人間の主食が同日、バーゲンセールとはいかがと思うが、コメも月1回2割引の特売だから見逃せない。値段は10kg3680円。これが2割引だと野口英世3枚で買え、当然女房の手が伸びる。これで我が家の家族構成(老夫婦と娘1人)からすれば、1カ月分の主食の確保は十分というわけだが、ペットフードの値段と見比べて妙な気分になる。
 今年は梅雨明けが遅く、日照不足で作柄はあまり良くないようだが、近所の田んぼにもコンバインが入りだした。収穫された米(この段階ではまだ稲)は、直ぐ店頭に並ぶわけではなく、検査で等級格付けされた後、倉庫で保管される。「売れる米」の前提は、生産者が丹精込めてつくった米を「これは間違いなく1等です」という検査の正しさと、米が倉庫から出庫するまで、虫やカビの被害にあわないように、しっかり保管することだ。その意味で米の「検査」と「保管」は、米流通の「車の両輪」といってよい。
 このため、米の検査と保管はながく国の管理の下、すなわち検査は国営検査、保管は国の指導監督のもとに運営されてきたが、検査は今年から完全に民営化、保管も数年前から自主保管となっている。さらに、来年度からは生産調整も国が手を引き、農業者・農業団体主体に変わる。北海道の牛乳じゃないが「余りものに益なし」、生産調整をやらずに、米が余ったら生産者側の責任というわけだ。要するに、米の検査も保管も需給調整も自己責任の世界に追い込まれたわけだが、これも当節では当たり前なのかもしれない。
 ただ、コメの値段は、従来どおり全国米穀取引・価格形成センターの入札価格が指標になる。生産調整をきちんとやらないと、コメの値段は守れないことは、誰しも分かることだが、入札という価格形成の仕組みで、果たして生産調整の実効があがるのだろうかと心配になる。川下では人間さまより、お犬さまの食べるものの値段のほうが高い変な世の中なのに…。(だだっ児)

(2006.9.12)

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