農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
 

「忘れ物」

 4月、新年度を迎え、JA全国機関にも、数百名のフレッシュマンが誕生した。JA全国機関のトップの挨拶を業界紙でひろってみる。
 全中の宮田会長は、「JAグループは“人”が最大の財産。基盤は“農村”」。全農の田林理事長は「6兆円の事業のうち、3兆円が農畜産物の販売事業。消費者に安心・安全な農畜産物の提供を」と訴える。でも、これらの言葉は、なぜか、心に響かない。唯一、目にとまるのは、全共連の新井会長が、「耕深」「耕心」という自己流の言葉を使って、「信頼を築くことが力の源泉」のくだり位。なぜだろうか。それは、新井会長のように、「農協とは何なのか」という、根幹の語りかけがないからだと思う。
 先に、農水省の「農協のあり方研究会」が報告書をとりまとめた。この研究会は、いうまでもなく、「小泉改革」の一環として、農協の構造改革を目論んだもの。目玉は農協の営農・経済事業の改革、なかんずく、全農改革である。そのポイントは「全農中心のシステムからJA中心のシステムへの転換」、「競争」がキーワードというから、おだやかでない。
 報告書では、JAは、市場流通だけでなく、消費者、スーパー、外食産業などへの直接販売を拡大する。全農は、大消費地におけるJAの直接販売などの支援事業、代金決済・需給情報提供などの機能に特化しなさい、という。いくら、インターネットの時代とはいえ、全農の卸機能を否定するのは、農協の販売事業を知らない人の論理。おにぎりが、はじめから、コンビニにあると思っている子供(失礼)でもあるまいに。
 そもそも、小泉改革は、国民が選んだ議員を除け者にして、先の生産調整研究会をはじめ、この手の私的研究会で重要な改革をとりまとめる手法が目立つ。これは、一見、民主主義的なやり方に見えるが、ある先生が言っていたように、官主導、「官主主義」であり、民主主義の社会における異常な対応であろう。
 何より、一番欠落しているのは、「農協とは何か」という根本議論がないことだ。農協を市場主義経済の「競争」にさらす論理は、そもそも農協組織を理解していない。ましてや、全農の機能は、農協経済事業の機能の元締め。それでやっと、農協は商業資本と伍することができる組織、断じて資本主義社会の隷属の組織ではないはず。
 「JA改革の断行」もいいが、われわれは、今一度、原点に返り、「農協とは何なのか」「全中・全農とは何なのか」を、JA全国大会で議論すべきではないだろうか。大きな「忘れ物」をしているのでは…。 (だだっ児) (2003.4.23)

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