農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
 

キャッチボール

 8月に入って、ようやく梅雨明け。やっと夏がきた。しかし、東北地方の低温・日照不足はまだつづくようだ。おまけに、宮城県では5月につづき、震度6の地震が3度も起こるなど、天変地異が次々と襲う「異常な7月」。
 夏といえば、甲子園球場が舞台の全国高校野球大会。梅雨空の中、甲子園をめざして、各地で熱戦が繰り広げられたが、地元の茨城大会決勝をテレビ観戦。3年連続夏の甲子園をめざす常総学院高校と春夏連続出場をめざす藤代高校の対決。試合は高校野球の監督50年、甲子園出場19回の木内監督の率いる常総学院の圧勝。
 試合後の「木内節」。今年のエースNO・1は、どこか頼りなげ。「どこにでもいる並のピッチャーですよ。高校野球は並でいいんです」と、好投したエースを苦笑させる。1回、先頭バッターが出塁。2番バッターはバントが常識。が、「初球を打て」のサイン。それがホームランで試合は決まり。その場面を「良いピッチャーは、バントをさせにくるので、初球は甘い球がくる」と読み、ズバリ。木内野球のモットーは「勝つ野球」。勝つ中で、子供たちを成長させることと、地元の新聞に書かれていたが、心憎いばかりの采配と選手操縦は見事。
 7月は天気も異常なら、中学1年生の幼児殺害事件や、小学校6年生の少女監禁事件やら、異常な、おぞましい事件が続いた。「親は市中引き回しのうえ、打ち首にすればいい」との担当大臣の発言はともかく、たしかに、どちらの事件も親の責任は重いが、こんな事件があると、子育てに不安を持つ親が多いにちがいない。
 先日、日経のコラム「春秋」でアメリカの父親は子供に「釣り、キャンプでの火起こし、キャッチボール」の3つを教えるとあった。釣りと火起こしは、食べ物を自分で探し、それを自分で料理しろ。キャッチボール? これは、相手がボールを取りやすいように胸をめがけて投げるのが基本。相手への思いやりを学ぶのだろう。要は、子供の自立心を父親が手をとって教え、育てる意味だと思う。
 常総学院の木内監督は、今年で勇退する。その理由は「プロ野球の監督は采配を振るうだけでいい。しかし、高校野球は子供を成長させなければならない。その意欲が薄れてきた感じがする」とのこと。立派。世のお父さん、木内監督のように、野球は教えられなくても、キャッチボールはできるでしょう。「何を言ってるんだ。リストラでそれどころじゃない」って。少子化、犯罪の低年齢化、いずれも根っこは同じ。子供とキャッチボールもできない世の中になったからでは…。 (だだっ児) (2003.8.6)

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