農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

食農教育では…

 立春を過ぎた途端、「光の春」が来た。でも、世の中は人畜にかかわる病気のニュースが飛び交って暗い。アメリカでのBSEの発生、中国でのSARSの再感染、日本やアジア各国での鳥インフルエンザの発生。先にはコイヘルペスウイルスもあった。
 01年9月11日の事件は、人間による人間への「テロ」だが、SARS、BSE、鳥インフルエンザは、家畜やウイルスが人類を襲う「テロ」だという識者がいるくらい不気味な世の中。『コレラが街にやってくる』(朝日新聞社)の著者・藤田紘一郎氏は、これらのグローバル・ウイルス(国境なき病原体)が「無菌国家」日本を襲ったら、過剰な清潔志向で免疫力を失った日本人は絶滅するやも知れないとまで警告する。
 たしかに、グローバル・ウイルスの蔓延は二酸化炭素を撒き散らし、地球の温暖化や生態系に異常をもたらした人類への逆襲かも知れない。そして、BSEや鳥インフルエンザによって、牛肉や鶏肉の輸入が停止しただけで混乱に陥る事態は、日本の食料事情の危うさ、日本人の脳天気さへの警告であろう。
 自民党は、今国会に「食育基本法」を議員立法で提出する。小泉首相も今国会の施政方針演説で、知育・徳育・体育とともに食育が大事であると強調。「飽食の時代」といわれ、食卓のゆがみが目立つ昨今、誠にタイムリーな法案。なぜなら、食の立て直しは、裏返せば食材を提供する農業をどうするかと直結するからだ。
 ところが、ある新年の集い。今夏の参議院選の立候補者数名が挨拶。そのうちの一人は、「日本はどんなに自給率向上に頑張っても6割が限度。だから、4割は外国の畑を確保しなければ」と発言。この発想は日本は食料自給率を上げるよりは、「安い農畜産物は輸入で」という、輸入を前提とした「すみ分け」論。聞けば、彼らが食育基本法案作成のプロジェクトとか。どうやらこの法案も所詮、小泉流の国民、消費者向けのパフォーマンスに過ぎないようにみえる。
 今、学校現場では、JA等が力を入れて、農作物の栽培や収穫、調理という農業・調理体験を通じて、食と農を学ぶ取り組みが広がっている。こうした食だけではなく、食と農、すなわち食農教育の実践でなければ、農業の大切さも、自給率向上が必要なことも理解されない。それには、食育基本法ではなく、食農基本法だ。「農」と「教」の二文字を忘れている。

(だだっ児) (2004.2.20)

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