農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

『もう作ってやらねえ』

 7月11日に、参議院選挙が行われた。選挙前の情勢では、自民党の苦戦が伝えられた。朝日新聞の世論調査でも、「小泉首相は国民の感覚に近いか」の問いに、「思わない」が59%と有権者の“小泉離れ”は加速している。
 1年以上も前から、会社や家族、そして社会全体が関心を示した「年金問題」が「人生いろいろ、会社もいろいろ…」と国民をなめきった論法で、年金改革関連法を押し通す。イラクに派遣した自衛隊の多国籍軍参加を、国会の審議も、国民への説明もなく、日米首脳会談でブッシュ大統領に通告する独善ぶり。自民党が参院選で勝って、小泉独裁政治があと2年も続くと、日本はどんな国になるか、考えるとそら恐ろしくなる。
 その参院選の勝敗のカギを握るのは、27ある「1人区」。とくに、前回参院選で1人区の獲得議席ゼロの民主党は、農村票の掘り起こしに懸命。「兼業農家を含めて、230万戸に年に計1兆円を支払う」と所得補償をぶち掲げる。自民党も日本型直接支払いの導入や、農産物輸出を促進する「攻めの農政」とかを訴える。
 また、公明、社民、共産のどの政党も、直接支払いをアピール。この政策は、中山間地域対策としてはともかく、農家にも異論が多いようだ。「かわいそうな農家を救ってあげようという福祉農政から抜け出ていない」「どの党も欲しいのは農業の未来じゃなく、その場限りの農村票」(7月4日朝日新聞)と、腹の底を見抜いている。
 先日でた日経ビジネス、「農業再興」−「食」の崩壊を回避せよと、勇ましいタイトルでトップに山下惣一さんを登場させていた。山下さんとは、5、6年前、本紙の座談会で1度お会いしたことがあるが、その頃は各国の農業を見てきて、「外国に比べると、日本は農産物の販路が苦労しなくていい、地産地消で、さばける国だから恵まれている」と、割と穏やかに話されていたのを思い出す。
 しかし、ここの記事では、この農民作家は、世紀が変わってから、その文章も、そして言葉も、「国が農業を守ろうとする意思がないのなら、もう作ってやらねえ」と、より先鋭化していると書かれている。それは、農村に広がる危機感の上昇カーブと重なり合うとも。また、山下さんは今の農家を「農政棄民」とも言っているが、直接支払いも農家を福祉や生活保護世帯とみなしているような気がしてならない。
 “フランスの富と力は田園にあり”という言葉がある。日本にもかつて(?)“農は国の基なり”というのがあった。問われているのは、農業に対する国の基本スタンス!(だだっ児)

(2004.7.12)

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