農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

命の水「三岳」

 屋久島は九州最高峰の宮之浦岳(1935m)、永田岳・黒味岳の三岳をはじめ、「洋上のアルプス」の異名をとる数十座の急峻な山々がそびえている。なにしろ、島の75%が山また山、そして山間部は年1万ミリの雨が降り、「月に35日雨が降る」と言われる島。でも、この夏、この島もご他聞にもれず、20日間1滴の雨も降らなかったという。
 台風22号が去った10月中旬、山登り仲間5人で、宮之浦岳をアタック。登頂後、山小屋で一泊し、膝が笑い、足を引きずりながらどうにか下山。「こんなきつい登山はもうごめん」と、いつも思うが、止められない訳がある。下山の後の「酒の旨さ」。この島で山の三岳ならず、焼酎の「三岳」に出会う。
 今、空前の焼酎ブーム。屋久島は「命の島」といい、ここの焼酎は「命の水」とかで、「三岳」は東京・大阪の大消費地で引っ張りだこ。そのあおりで、島民は晩酌にことかく始末。島のAコープ店に顔を出すと、1升ビンと5号ビンが数本並ぶだけ、しかもお一人様1本限定販売の売れっ子ぶり。
 焼酎は酒税法上、甲類と乙類に分類され、500年の伝統のある日本固有の蒸留酒として「本格焼酎」を名乗れるのは乙類だけという。「三岳」は、原料はもちろんサツマイモだが、原生林に濾過された名水でつくられているせいか、乙類焼酎独特のいやな臭いがしない。また、血栓を溶かして血液循環を良くする酵素が多く、健康にもよいというのがブームの要因とか。
 帰り、台風23号が迫り、鹿児島からのYS機が屋久島空港に降りられない。また、2〜3日、島に缶詰めと思いきや、旋回中の飛行機がどうにか着陸。人間様は無事ご帰還となったが、宅急便の「三岳」は5日遅れの到着。翌日配達が謳い文句のクロネコヤマトもさすがに台風には勝てなかったようだ。
 台風23号が去ったと思うと、今度は新潟県中越地震。山も棚田も動き、家も道路もズタズタ、人も牛も命からがら。目を覆わんばかりの惨状に言葉もでない。震源地、小千谷には仕事で二三度訪れたことがあるが、へぎそば、縮み、闘牛、花火が有名、JAには錦鯉の市場もある。それに魚沼コシヒカリ、そして酒。焼酎もいいが、米どころはやはり日本酒が似合う。「越の寒梅」「久保田」「八海山」…は日本の名酒。被災者も早く落ち着き、酒を思い切り飲みたかろうに…。1日も早い復興をお祈りします。(だだっ児)

(2004.11.19)

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