農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

農業小学校

 落書きを「楽書き」、遠足を「園足」、田園を「電園」、農家を「農科」と書き、米作を「こめ作」と読む。財団法人「総合初等教育研究所」が全国53校、約1万5000人の小学生の漢字読み書き調査での誤・珍答例。
 この調査では「田園」や「米作」の間違いは多かったが、「高層ビル」を正しく書ける子が6割を超えるという。調査校は都会が多かったのか、遠足はどこにいくのか、田舎や田んぼは見たことがあるのだろうかと、少し寂しい気持ちになる。おまけに、国際的にも日本の子どもの学力が低下しているとかで、文部科学省は「ゆとり教育」の見直しにやっきになっている。
 昨年の12月、新聞で児童文学作家の今西祐行さんの死亡記事が目にとまった。原爆のむごさを訴えた「あるハンノキの話」、時代小説「肥後の石工」、戦争を題材にした代表作「一つの花」…残念ながらどれ一つ読んでいない。以前、熊本で石組の眼鏡橋を見て、先人の偉大な技術に感心したが、遅まきながら「肥後の石工」ぐらいは読んでみたいものだ。
 今西さんの児童文学のことはさておき、興味を引いたのは、氏の紹介に「農業小学校」を創設したとあったこと。「農業小学校」?インターネットを開くと、氏は87年に神奈川県藤野町に「菅井農業小学校」を開校、校長兼用務員に就いたとある。そして「子どもにとって農業体験とは何か」という、氏の基調講演の要旨が載っていた。少し紹介すると、例えば、「畝(ウネ)をきる」、「大根をひく」という言葉は、実際に農業体験を通じて、身体全体で覚える。こうして覚えた言葉は生涯忘れることはないと言っている。先の漢字読み書きの誤・珍答例じゃないが、頭の中だけでは、身につかないことを教えている。
 また、カルチャー(文化)という言葉はアグリカルチャー(農業)からできた言葉で、農業体験は教育の手段としてではなく、教育そのものとして捉えてほしいと語っている。「農業こそ教育そのもの」、これが氏の「農業小学校」創設の理由。「耕す人、漁る人」、「これが人間の根源」と言うから凄い人だ。
 今西さんは、耕作が放棄された田畑をすべて耕して、全国の隅々で農業小学校が開かれることが望みだったという。40年もの伝統ある農業大学校が廃止される。ならば、農業大学校の代わりに農業小学校をどんどん広げよう。案外、こうした活動が子どもたちの教育ばかりでなく、農業再生のキーかもしれない。(だだっ児)

(2005.2.17)

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