農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

新生全農の船出

 今、堺屋太一さんの新版「団塊の世代」が刊行されている。著者が新版の刊行に寄せて「30年振りに出会った昔の恋人が、若々しさを保っていてくれたような喜びがある」と言うように、氏が30年前に予測した社会がそのまま現出されているのに驚かされる。
 その堺屋さんが、先月、TVの時事放談で日本は滅びゆく「最後の社会主義国家」だと語っていた。日本は政治も経済も全て官僚が牛耳ってきた社会主義国家だという訳だ。その社会主義国家が最初に滅びたのがソヴィェトで最後に滅びるのは日本だという。日本が社会主義国家かどうかいざしらず、たしかに今までお役人主導で世の中が動いてきたし、未だにその力は絶大。
 先般、JA全農はそのお役所の強力な指導を受けて、新生全農へのスタートを切った。全農改革委員会による改革案を検討中に、秋田の米不正取引問題が発生し、それこそ組織誕生以来の危機に直面。そこで「新生全農を創る改革実行策」を掲げ、経営役員や理事会メンバーを一新した。理事長以下の顔ぶれをみると、はえぬきの「全農マン」が目立つ。その意味で、全購販合併以来30余年を経て、やっと本物の「全農」の執行体制ができたのかもしれない。
 ただ、新生全農を創る道は前途多難。農水省から全農のあるべき姿として、「全国一本化」か「ブロックないし県別」の選択を迫まれ、前者を選択。事業運営は管理、耕種、畜産、生活の4つの「事業本部制」をめざすとしている。とりわけ、柱となる耕種部門は、米や野菜などは地域ごとに激しい産地間競争を繰り広げているだけに事業本部制の確立は困難が予想される。たとえば、新潟や宮城の米を一括りにして「全農米」として売れる訳がなく、やり方如何では、「統合全農」どころか「解体全農」になりかねないリスクを背負っている。
 次に、JAグループには「ポスト米政策改革」や「品目横断的な経営安定対策」など、従来とは180度違う農政課題がまじかに迫っている。米の需給調整は農家やJA主体でやりなさい、麦などの内外価格差分は全農家に等しく、から担い手農家だけに支払うという。これに絡み、担い手の範囲が激しく議論されているが、認定農業者やら特定農業団体など、国のお墨付きをもらった人でないと担い手ではないとは如何なものか。JAグループには「組合員」の呼称しかいらない! これも堺屋さんのいう日本が社会主義国家たるゆえんか。(だだっ児)
(2005.8.9)

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