農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

天下分け目の戦い

 8月はじめ、鳥海山に登るため酒田に寄った。駅前の大型スーパーが消え、商店街もシャッターを降ろしているのが目立つ。来る度に酒田の街は活気が失せているが庄内はやっぱり米のクニ。その象徴が山居倉庫。百年以上も経つ米の保管倉庫が今でも現役で頑張っている。太陽熱を和らげる二重屋根構造、夏の西日、冬の季節風をさえぎるケヤキ並木、人間より米を大切にしたのではと思わせる先人の知恵と工夫には驚かされる。
 この山居倉庫に観光バスがひっきりなしにやってくる。10数棟ある倉庫の一部を利用して、庄内米歴史資料館・お米ギャラリー、昨春は農産物直売所や酒田市観光物産館がオープンし、観光客が急増しているのだという。でも、かつては、昭和天皇が皇太子時代に行啓したこともあるこの倉庫の変貌は、日本農業の衰退をみるような気がして何か寂しい。
 登山を無事終え、下山すると下界は衆議院解散ときた。小泉首相は郵政民営化に賛成か否かを問う政策選挙だといい、片や民主党は政権選挙と位置づける。
 たしかに、解散の動機は郵政民営化。しかし、今度の選挙は小泉首相を信任するか、民主党岡田政権を誕生させるか、天下分け目の決戦。とりわけ、この国の農業の行く末は、どちらの政権が誕生するかで大きく変わる。
 何しろ、現政府の目玉である品目横断的な経営安定対策は詰めの作業が目前。JAグループもこれに沿って準備の真っ最中。一方、民主党はマニフェストで「1兆円の直接支払い」や「300万トン備蓄構想」を掲げる。現政府の農業政策は農業の担い手を絞りこみ、攻めの農政で輸出に活路をみいだそうとするが、いわば農業の縮小再編を前提にした組み立てのように思う。
 この点、過日、日本農業新聞で菅直人民主党前代表が「農業政策は産業政策ではない」とインタビューで述べていたが、この農業のあり方や捉え方は個人的には評価したい。とりわけ、米の300万トン備蓄構想は世界に誇る日本の水田農業を復活し、日本の食の安全保障、東アジア米備蓄構想へ、そして世界の飢餓を救う道につながる構想と思う。また、先人が営々と築いた山居倉庫のような米蔵は観光や文化遺産ではなく、先の米備蓄構想のための倉庫として活かす方法でもあろう。
  その他の政党も農政公約を打ち出している。今回の総選挙は、日本農業の将来をどうするのか、改めて考える機会としたい。(だだっ児)

(2005.8.24)

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