農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

当たり前のこと・・・?

 「北海道は、近い将来、コシヒカリの適地になる」。これは先日、東北のある産地卸から聞いた話。何しろ、今年の北海道は、作況指数「109」の大豊作。近年、紅葉前線の南下が遅れているそうだが、米の世界も温暖化で随分様変わりしている。東北・北海道といえば、昔は宮沢賢治じゃないが「冷夏」・「冷害」に泣かされてきたが、今は「高温障害」が心配だというから驚く。
 北海道の作況指数が1〜2ポイント低ければ、豊作時に過剰米を主食用から隔離する集荷円滑化対策の発動はなかったかも知れないが、全国の作況指数は「101」で確定、農家は泣く泣く入札価格の半値以下で出荷する羽目に。本来であれば、豊作なのだから値段がつくだけ有り難いことかもしれないが、大幅な転作を行い、米価低迷のなかではやりきれない話。おまけに、過剰米は1年間倉庫で保管しなければならない。
 こうした過剰米に限らず、米は倉庫で一定期間保管しなければならない。米は毎日、毎月順々に消費されるが、米の生産は出来秋に集中する。そのため、JAは農業倉庫で、米の「商品」としての価値を落とさないように管理しなければならない。その期間は、米が田んぼに立っている間より、はるかに長い。しかも、売れなければ、いつまでも倉庫で眠っていなければならない。
 だが、どっこい「米は生きている」。倉庫で保管中、米は呼吸し、次第に新鮮さを失っていく。また、コクゾウなる虫、ネズミが虎視眈々。カビやダニなどにも要注意。JAは、「売れる米」「買ってもらえる米」と懸命だが、その前提条件の一つがしっかり「保管」した米。今や減農薬などの「特別栽培米」が当たり前のようだが、しっかり保管することも当たり前のこと。
 次に、これは当たり前のことだろうか?「一粒たりとも異品種が混じってはダメ」という、コンタミ防止の話。たとえばコシヒカリ100%と精米袋に表示したら、他品種が一粒でも混じると、JAS法違反になるという。もともと、これは違法表示の防止、○○品種100%と表示しながら、中身を偽るインチキ商法を取り締まる法律の筈。これと「一粒たりとも」とは、性格が180度違う、水と油を一緒くたにしたような法律に思える。BSE問題は「安全」に大きく関わるが、米のコンタミは何ら「安全」とは関係がない。
 世の中、案外、当たり前でないことを「当たり前」のことと思っているような気がしてならない。だから、誰も不条理と思っても反対ができないのでは・・・。(だだっ児)

(2005.12.7)

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