農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

「麦秋」考

 この国はゴールデンウィークを境に世界が一変する。日本は「水の国」といわれるが、田んぼに水が満々と張られ、苗が整然と植えられる。周りの木々の緑はモネもゴッホでも描けない色合いをみせる。人間の世界では「色白七難隠す」というが、自然界では緑が映えると、どんな景色も絵になる。
 昭和40年代前半、九州でビール麦の受け渡しを担当していた頃、農業試験場の先生が日本の原風景は「赤黄青」といったのを思いだす。交通信号ではありません。赤はれんげ、黄は菜種、青、緑は麦を指す。当時、麦は生産量が年々少なくなりこのままでは安楽死だと、国は大変な金額を投入して麦作振興施策をとり、ようやく一命、いや回復基調に乗ったのを記憶している。
 いよいよ麦秋の季節。ところがここにきて、国産麦の世界もまた大きく変わろうとしている。例の新対策、品目横断的経営安定対策である。麦は1俵(60キロ)9000円程のうち、品代そのものは2000円くらいで、残りの部分は外麦の輸入差益を原資とした麦作経営安定資金(麦経)で賄われている。この麦経部分が新対策に統合される見通しだ。一見、このやり方はあまり現行と違わないようにみえるが実質は大違い。
 今まで、麦作農家は麦経相当額は仮渡金として検査後即支払われ、販売完了後追加精算されていたが、新対策ではこの方法がとれない。おまけに、新対策は、「日本型直接支払い」という括弧書きが付いていて、この部分は文字通り、JAを通してではなく、農家の指定した口座に直接支払われるのだという(JAの代理申請も認められるようだが)。当然JAの売り上げもたたない。
 麦は政府買入れから民間流通麦になり、JAグループも販売に汗をかく時代になった。ここまでは時代の流れとしても、これが1俵2000円で販売に力が入るだろうか。また「共同計算」のもとで、共乾施設での乾燥調製代や生産資材費も一括処理できたがこれも難しくなろう。巷間に「農協はいらないのか」という冊子がでているが、このやり方をみていると、そう言いたくもなる。
 翻って、この新対策で日本の麦作は本当に大丈夫だろうか? ビール麦にしても、昔は「おらが麦が○○ビール」だと、麦作農家の人は誇りをもって生産していた。誰かさんも当時から「酒はビール、女は女房」で真面目(?)に人生を歩んできたが…「麦秋」が死語にならないように切に祈るのです。(だだっ児)

(2006.5.16)

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