農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
「三丁目の夕日」

 3万2552人は昨年1年間に全国で自殺した人の数。1.25は日本人女性が産む子どもの平均数。自殺者は8年連続3万人を超え、合計特殊出生率は過去最低まで下がったという。自殺の動機では「健康問題」が最多で全体の半数、「経済・生活問題」が全体の約4分の1を占めている。少子化の要因は、晩婚・晩産化、「非婚化」が上げられている。
 死んでいく人が多く、生まれてくる子どもが少ない変な世の中。とりわけ、少子化問題では国は小泉チルドレンの猪口氏を少子化担当相に抜擢したがなかなか効果があがらない。なんでも、小泉首相は財源を確保した「給付型」の政策には否定的で「昔の貧乏な頃の方がよほど子だくさんだった。金のかからない話もあるのではないか」と周囲に漏らしているとか(6/2朝日)。このひとの頭はどこまでお目出度いのだろう。
 先には、社会保険庁の国民年金保険料の不正免除・猶予問題が起きた。分母を減らす、さすが役人、頭のよさに呆れてものが言えない。でも、社会保険庁を責めるのも結構だが、その背景、なぜ、年金保険料未納者が多いのかに焦点を当てた報道がないのが不思議。こんなでたらめな役所に肩をもつ気はさらさらないが、未納者がいなければこんなことも起きないはず。
 自殺者が多いのも、少子化問題も、年金未納者が多いのも、基本的には暮らしていけないからでは? とくに、今の若者は気の毒。今や雇用者の3人に1人が非正社員とか。非正社員でどうして、結婚や子どもを持つことが考えられるだろうか。どうして、将来あてにできない年金の保険料を払えるだろうか。正社員でも成果主義とやらで、過労で健康を損なえば、人生の後を絶つことにもなろう。教育基本法の改正で「愛国心」がどうのこうのともめているが、愛国心がないのは、国民ではなく利潤追求にやっきの企業ではと言いたくもなる。
 だいぶ前、近所の市民会館に映画「ALWAYS・三丁目の夕日」が来たので観にいった。時間がゆっくり流れている。人々の心が通っている。そして、何より、子どもが元気だ。いまさら、昔に戻るべくもないが、真っ赤に輝く‘夕日’はALWAYS。せめて、夕日のように将来に希望が持てる社会、若者に人生設計が建てられる社会、年寄りが安心して暮らせる社会への舵取りをポスト小泉に期待したいものです。 (だだっ児)

(2006.6.9)

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