農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

老兵は消えゆくのみ

 のっけから私事で恐縮だが、梅雨空じゃないが最近子どものことで少々うっとおしい。それは、二人の子ども(娘と息子)が、いい大人になりながら、そろって独身で一向に人生が前に進まないことだ。フリーターならいざ知らず、ともに正社員として働きながら、結婚し、子どもを持つ雰囲気がまるでない。
 「会社は週4日勤務だといいんだけど……」と同居の娘がポツリ。「何言ってるんだ、昔は土曜も働いたぞ」と、彼女の仕事のきつさも知らずに愚痴る親父。口を開けば「金が無い金が無い」といい、車購入費の半分を親に持たせ、背広は2着目の千円しか払わない息子。これじゃ、子どもの自立心は育たないと思いつつ、甘い顔をするダメ親父。「オレオレ詐欺」はいても、「ワシジャワシジャ詐欺」はいないそうだが、詐欺師は世の中をよくみているとヘンに感心。
 こんな貧相な家庭や社会がつづくと、そのうちこの国は潰れるのではと心配になる。先日、朝日の社説に『「氷河期」の若者を救え』とあった。そこには、今こそ景気の回復や団塊世代の退職で、企業の採用意欲が高まっているが、問題は少し前の「就職氷河期」にぶつかり、フリーターとならざるを得なかった若者の存在を指摘。フリーターの数は200万人の大台に乗り、しかも25〜34歳がその半数を占めて、「高齢化」が進んでいると書かれている。
 我が家のように正社員として働きながらも普通の人生・社会生活を歩もうとしない世の中、どうして、フリーターの身で結婚して家庭をもてよう。社説の終わりにフリーター経験をもつ障害者支援のNPO法人で働く杉田さんが、「フリーターは親を最後のよりどころにしている。やがて親子ともに高齢化、貧困化していく。そのときに初めて本当の問題がむきだしになる」と日本社会の行方を予測する談話を紹介している。どうも想像以上にこの国の行方は危うい。
 一方、若者たちの雇用不安をよそに、彼等の親世代、団塊のおじさんは、定年後も働きたいという人が多い。また、この4月から定年延長・再雇用制度が導入された。これは日本人は勤勉で働き者の証左? 定年後、居場所がなく働く人(誰かさん?のように)もいようが、ふつうは誰しもハッピィリタイアといきたいものだ。とくに定年延長は年金財政破綻を回避する問題先送りの手法で問題。雇用改善を図り、若者がバリバリ働かなくちゃ社会も国も壊れる。ここは「選手交代」、「老兵は死なず、ただ消えゆくのみ」。(だだっ児)

(2006.6.28)

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