農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂

「美しい国」&「普通の国」

 実りの秋を迎えた。農耕民族にはやはり秋がいい。その秋一番、秋篠宮妃紀子さまに41年ぶりに男の子が授かった。お名前は「悠仁」と命名され、「ゆったりとした気持ちで、長く久しく人生を歩んで欲しい」という願いが込められているという。たった一人の赤ちゃんの誕生に国民がこれほど注目するのは、その心底に皇室を農耕民族の長として崇めているせいではと思ったりする。
 新宮誕生後の9月の第2週末、近所の田んぼに一斉にコンバインが入った。コンバインは稲刈り、脱穀、稲わらの処理を同時に行う機械だが、その姿は大砲のような筒(籾を運ぶトラックに送る装置)を備え、まるで戦車のようだ。ただ、戦車とちがって、クボタ、ヤンマー、イセキと横文字が入り赤や白とカラフルな点だ。あちこちの田んぼにカラフルな戦車が走るが、このへんの農家は来年から始まる新農政にどう対応するのか、少々心配になる。
 さて、9月の話題はなんといってもポスト小泉、自民党総裁選。事実上、次期首相選びだ。安倍・谷垣・麻生の3氏が立候補しているが、安倍氏が圧倒的優位の情勢。気になる農業・農村振興に対する考えは、安倍氏は「再チャレンジ支援」「美しい国」を掲げ、農林漁業者の「所得の拡大」を打ち出す。麻生氏は輸出を含め「攻める農政」。谷垣氏は「社会政策としての農業」を訴え、少しは目を引くが、いずれも具体性に乏しい。それもそのはず、小泉農政改革はすでにスタートしているのだから、新しいものが出るはずもない。
 そんな中、今度は民主党の小沢代表が「小沢ビジョン」を発表。「扇動政治」から「常識の政治」、「普通の国」を実現するとしている。その中で、農業政策は「国内自給体制の確立」と「個別(戸別)所得補償制度」を設けるとし、現行路線に異を唱える。勿論、来夏の参院選挙を睨んでの政策だろうが、自民党3候補の都会育ちとは違い、農業県出身の代議士らしい目線を感じる。とりわけ、小沢氏の自給率100%論に対して、やれ「無責任」だ、「200カイリまで農地にするつもりか」という批判もあるが、これ位の意気込みは必要では…。また、その一方で小沢氏のいう農産物の輸入自由化論は解せない。
 いずれにせよ、この国は農業を社会基盤安定の基本に据え、美しい田園を守りつづけ、天皇ご一家がみせる穏やかな、優しい心根を国民が取り戻さないと、「美しい国」も「普通の国」も実現しまい。(だだっ児)

(2006.9.28)

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