農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂

“田園立国”宣言

 暦は4月になった。しかし、依然としてこの列島は異変がつづく。予期せぬ大地震が能登半島を襲い、桜は小中学生の入学式を待たずに散ろうとしている。冬らしくない冬が終わり、春が来たと思ったら、一足飛びに初夏の陽気。アル・ゴアさんじゃないが、「地球は熱が出ている」のかもしれない。
 さて、新年度を迎え、社会の仕組みや制度が切り替わる。とりわけ、この国の農業政策は「戦後農政の大転換」へ舵が切られた。今国会、松岡農相の光熱水費問題で「何とか還元水国会」とかいわれ、予算審議でどこまで深みのある議論がされたのか詳しくは知らぬが、農業改革の「車の両輪」といわれる「品目横断的経営安定対策」と「農地・水・環境保全向上対策」の二つがスタートする。さらに、もう一つ、肝心要、3輪車でいえば、一番先頭の車輪、米政策改革が第2ステージに入る。
 その米は、今年から需給調整、生産調整の実施を生産者、生産者団体が主体的にすすめることになっているが、米は麦や大豆などと違い、内外格差の補填(げた対策)がなく、価格下落の補填(ならし対策)しかない。今、世界中で、バイオエタノールの生産拡大が叫ばれ、そのからみで、外国産トウモロコシの高騰が現実になっているが、それらを踏まえた米、水田農業を活用した抜本的、総合的な対策がでてこないのはどうしてだろう。
 ところで、日本農業新聞が創刊80周年を記念として、年間キャンペーン「田園立国」を、この4月から始めるという。大変結構な企画。ただ、これを農業を軽視する風潮のなかで国民全体に浸透させるのは容易なことではない。たとえば、先般、全農等の主催する農畜産物展示商談会なるものをのぞいたが、如何せんスケールが小さい。これをフランスの「パリ農業国際見本市」のように国を挙げた取り組みにしなければ、「フランスの力は田園にあり」を「日本の」とする「田園立国」は、望み得べきもないような気がする。
 だが、手を拱いているときではないのは確か。先頃、米韓の自由貿易協定(FTA)交渉が合意し、「次は日本」という声や、豪州とのEPAの早期締結を求める動きが強まることが懸念されている。これらの圧力を跳ね返すには、安倍首相が日本が「美しい国」いや、「田園立国」であることを宣言し、フランスのように国民全体がその意識をもつことしかないと思うが、遅きに失するか…。(だだっ児)

(2007.4.10)

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