農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂
食品偽装はなぜ起きる?

 「これでは愛想つかされる」、「老舗よ、お前もか」、「老舗の誇りはどこへ」。これらは一連の食品偽装に関するある新聞の社説の見出し。最初のは「白い恋人」、二つ目は「赤福」、三つ目は「船場吉兆」。さすが新聞社、タイトルが上手いなどと、感心していられないほど、今年は「不二家」に始まり、「偽牛ミンチ」、「比内鶏」と、食品企業の不祥事が相次いだ。
 何せ、パソコンで「不祥事企業」と入力したら、「不正直業」と変換されたという、笑い話まで出る始末。ただ、これらの不正をなくすのに、彼等の悪徳商法を糾弾することだけで片付く問題だろうか。どこかの社長が「販売店も悪いし、半額セールで喜んで買う消費者にも問題がある」と発言して、パッシングを受けたが、一面では的を射ている、と言ってはお叱りを受けるのだろうか…。
 たとえば、近所でもスーパーが乱立、連日、馬鹿でかい広告を新聞にはさむ。われわれ消費者は、その安売り広告を手にスーパーに走り、大量に買込んでは冷蔵庫に詰め込み、あげくは腐らす。米にしても、近所のスーパーでは毎月末、なぜかペットフードと同じ日に特売がある。10キロで通常価格より900円〜1000円も安い。これでは普通の日に米を買う人はいないだろう。
 片方で、やれトレサビリィティ(栽培履歴)だ、コンタミ(異品種混入問題)だ、ポジティブリスト(農薬の規制)だと、消費者の健康に関わるものならいざ知らず、重箱の隅をつつくような規制を生産農家に押し付けながら、国民の主食たる米がペットフードと並んで特売の目玉商品では、かの水戸黄門様がみたら、100叩きの刑ではすまないだろうにと思ってしまう。
 敢えて言わせてもらえば、これら一連の食品偽装事件の根っこは、先の誰かのセリフじゃないが、生産農家の苦労を知らずに、「安さ」ばかり追う、販売店や我われ消費者の姿勢に問題があるように思う。もう一つは、賞味期限や消費期限に頼る我われ現代人は、安全を取り入れ、危険を避けるために人間に与えられた五感(視覚、嗅覚、味覚...)を劣化させてやいないか?
 しかし、この問題の解決は容易ではない。それには食品の原材料を提供する生産農家が再生産できる「健全な価格」にならない限り、そして日本人のモラルをはじめ、あらゆる面の劣化がとまらない限り(香山リカ「なぜ日本人は劣化したか」講談社現代新書)、「ごまかし列島」はつづくように思うのです。(駄々っ子)

(2007.11.29)

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