農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂
食卓の品格

 「どげんかせんといかん」。これは高校生ゴルファー石川遼君の「ハニカミ王子」とともに、今年の流行語大賞に選ばれた宮崎県の東国原知事の言葉。知事は「今の世相、日本社会の格差を如実に表している」と語っている。たしかに、農村は『貧困社会』といわれ、「夢は正社員」の雇用格差、生活保護世帯が150万世帯、自殺者が9年連続3万人超を数えるなど、この国の格差問題は深刻。
 もう一つ、今年流行った言葉に「○○の品格」がある。これは昨年流行語大賞にもなった藤原正彦さんの「国家の品格」が口火を切り、「男の品格」「女性の品格」「横綱の品格」「経営者の品格」、テレビで高視聴率をあげた「ハケンの品格」、果ては「トヨタの品格」とやらまで、続々。「品格」を辞書でみると「その人や、その物に感じられる気高さや上品さ」とあるが、こうもこの言葉が乱れ飛ぶのは、格差社会の進行とともに、藤原正彦さんが言う国家、いや、それを構成する「日本人の品格」が消えつつある証拠なのだろう。
 ふつう「品格」の前につくのは、男、女、経営者・・と、ひと様だが、過日新聞を読んでいると、「食卓の品格」なる言葉に出くわした(12/6付朝日魚柄仁之助「国産の食材、ムダなく使え」)。魚柄さんは「冷蔵庫で食品を腐らす日本人」(朝日新書)の著者でもあるが、食文化研究家を名乗るだけにその視点は鋭い。氏は寄稿文で、今の一連の食品値上げは化石燃料、バイオ燃料に原因がある食品、石油や原材料が高くなれば当然高値になる。しかし、国産をみれば農機や漁船用の燃料は値上がりしたものの、国産の米10`、秋刀魚1匹の値段は殆んど変わっていない。食卓は原則国産食料品で賄うのが食料品値上げの防衛策だという。
 また、魚柄さんは、先の本で、家庭の冷蔵庫は巨大化する一方で、何年も前に詰め込んだ冷凍した肉や魚、しなびた野菜でぎっしり。冷蔵庫は永久凍土と化し、食品を腐らしていると、現代の歪んだ「食生活」を指摘する。また、世間では「食の安全・安心」が盛んに叫ばれているが、食料自給率が40%を切る中で、今必要なのは「食糧の確保」の安全。それには、自国での食糧生産を支えるべく消費者が買い支え、食品値上げを騒ぐ前に「食卓の品格」を考えましょう、と説く。ご尤も。「食卓の品格」、これが来年、流行語大賞になれば、「日本人の品格」もまだまだ捨てたものでない、と思うのですが…。(駄々っ子)

(2007.12.20)

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