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コラム  大仁田厚のファイヤー農業革命


土の偉大さ、もっと伝えようぜ!

 ある日のこと。参議院の本会議が終わり、議員会館の事務所に戻ろうと思いながら、国会内を歩いていると、どこの県だかわからないが、国会見学中の一行と鉢合わせてしまった。オレを見つけた瞬間、ご一行様が手を振ってくれるじゃないか。「ファイアー!」と、一発気前よくかまそうかと思ったが、ここは品よく振る舞うことに。手を振り返すと、オレの所に寄ってきて、いつの間にか一緒に記念撮影を行う羽目になってしまったのだ。すると、一人のおばあちゃんが真剣な顔をしてオレに問いかけた。
 「国会議員の方々は、一体どんな仕事をしているんだい?」――たしかに友達からもよく聞かれる質問である。
 議員になってからオレの生活は一変した。朝六時半に起床し、七時半〜八時の間に始まる農林や文教の部会に出て専門家の話を聞き、各省庁に意見を申し入れる。この部会は朝食を兼ねて弁当が出されるのだが、メニューときたらほとんど変わらないのが悩みのタネ。魚の中味が、鮭か銀ダラかサバになるという程度なのだ。ちなみにこの朝食代はがっちり徴収されているのは言うまでもない。
 会が終わると、国対や議院運営委員会に出席。日によっては本会議場に出ることもある。事務所に戻れば、様々な人が陳情に訪れる。はっきりいって、こんなに国会議員が忙しいとは思わなかった。
 そういった仕事を一つひとつ説明しながら、記念撮影をしていると、係員が駆けつけて来た。開口一番、「国会内での撮影は止めてください!」。バカヤローとまでは言わないが、疑惑・疑惑の今国会、このぐらいのサービスぐらい、なんじゃ! せっかく地方から出て来てくれたんだぞ!
 やっとご一行から解放され、事務所に戻ってみると、先日ロケで知り合ったタクシーの運転手さんから荷物が届いていた。ふたを開けてみると、トマトとキュウリがどっさり。「うちの畑で採れた無農薬のトマトとキュウリです。体に気をつけて頑張ってください」という手紙が添えられていた。
 野菜を手にしながら、昔はこんな不ぞろいの野菜が多かったなあと思い出にふけってしまった。今はスーパーに行くと、規格に合わせて大きさがそろえられ、きちんとパックされた野菜ばかりが目につく。
 オレは宿舎に帰り、その夜、太さも大きさもさまざまなキュウリに塩だけつけてほおばった。その瞬間、みずみずしくほのかな甘みが口いっぱい広がる。昔のキュウリの味だ。
 今の時代、魚は切り身のまま泳いでいると思っている子どもたちがいる。これは笑いごとじゃない。汚れるからと土をいやがる親や子どもが増えている。しかし、子どもたちには、土の偉大さをもっと知ってほしいと思う。そのためにも、太陽と土の恵みをいっぱい受けて育った本物の野菜を、子どもたちに見せたいとオレは強く感じているのだ。


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