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コラム  大仁田厚のファイヤー農業革命


食べるってことは、本来は喜びのはずじゃないか。

 出るわ出るわ、ついに日本ハム、おまえまでもか、である。オレは寂しい。なぜなら実は、日本ハムファイターズの隠れファンなのだ。食料の安全について考えようという叫びが日増しに大きくなっている。
 そんなとき、あるテレビのドキュメンタリーで、ハム作りについて報道していた。
 ハムを作るには、たくさん化合物を使わなければならないのだが、あるハム会社の研究員が立ち上がり、無添加ハムの製作に取りかかった。化合物を使わないとハムはバサバサし、短時間で変色してしまう。何回も研究を重ね、乳酸菌を利用して成功し、近日発売だという。ところが予定価格は、100グラムあたりなんと1200円だというのだ! オレは考え込んでしまった。ショーウインドーに並んだそのハムを目にしたとき、はたしてオレは買うだろうか?
 これまでも人々は、食べ物への飽くなき挑戦を繰り返してきた。納豆しかり、チーズしかり。最初に食べた方にはホント、脱帽いたします。当然、なかには食中毒を起こした人もいただろうし、そういういくつもの失敗を積み重ねて、オレたちは現在の豊かな食生活を送ることができるのである。食生活は、大切な文化。だからこそ、食料の安全には気をつけなければならないと強く思う。
 これだけ、食品には関心が高まっているのに、一方でダイエット食品に対してあまりに無防備な姿も浮き彫りになった。食べた栄養分をそのまま排出するなんていうダイエット食品もたくさんあるが、それなら最初から食わなきゃいいのにと、思うのはオレだけなのだろうか。
 そんなとき、ロケで長野の田舎に行って来た。ロケの後、近所のおばあちゃんが出してくれた野菜のごった煮のうまいのなんのって。聞けば、さっき裏の畑で採れたばかりだという。肥料は?と尋ねると、「もちろん裏の“モノ”を使っているよ」という返事が返ってきた。心配そうなオレの表情に気づいたおばあちゃんは「だいじょうぶ。ちゃんと乾燥させているから。除虫だってこまめにやっているよ」と大声で笑い飛ばしたのだ。
 そういえばオレは子どもの頃、肥溜めにはまったことがある。昔はどこの畑にも肥溜めがあり、肥料として使っていた。
 おばあちゃんに話を聞きながら食べた食事は本当にうまかった。食べるっていうのは生きるための第一の目標で、本来、喜びにつながるはずなんだよな。食べた栄養を食べなかったことにして排出するなんて、食べ物を作った人に対して失礼じゃないのか?
 再び手作りが重要視される今だからこそ、丹精込めて作った生産者に対し、消費者も理解するようなシステムをきちんと作っていかなければいけないなあ、とオレは考え込んでしまった。
 おばちゃんありがとう。本当の野菜は、それだけ手が込んでいるんですね。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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