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コラム  大仁田厚のファイヤー農業革命


“農業ファッションショー”を開こうぜ!
カッコよかったアメリカの老農民

 寒い季節がやってきた。農作業に携わる方たちには大変な時期ではないかと思う今日この頃。
 先日、JAの青年部の人たちとの会合でひとしきり盛り上がった話題があるので、ここで紹介してみようと思う。
 オレはプロレスの若手時代、海外修業(遠征)でアメリカや旧西ドイツに長く滞在していた。そこで現地の人たちを観察して面白いと思ったのが、ファッションがバラエティーに富んでいて、それぞれの職種なりの服装があることだった。その中でひときわ目を引いたのがファーマー、つまり農民のファッションだった。
 一口に農民と言っても、その国や土地々々によって服装も違っていて、気候や風土に合わせてファッションを楽しんでいるようにさえ見えたのだ。
 アメリカの片田舎で会った、あるじいさんは、破れたジーパンに泥だらけのウェスタンブーツを履き、ベルトにはいぶし銀の光を放つ年代物のバックル。Tシャツに缶ビールのロゴが入ったキャップを被り、トラクターに股がって広大な大地を耕す姿に“西部の男”が感じられて、どうにもカッコいい。話しかけて「ハウ・オールド・アー・ユウ?」と齢を聞いてみると、「シックスティーエイト・イヤーズ・オールド」・・・・68歳だという。話し好きなのか暇なのか、昔話に始まり、現在のことまで語ってくれた。
 「オレはもう10代の頃から、この土地とともに生き、この土地を愛している。昔はこんな機械なんてなかった。牛や馬を使い、荒れ果てた広大な土地を耕していったんだ。そんな日々の中で収穫祭は楽しみだった。村中の人間が集まり、とくに女の子たちは1年に1度のことだから目一杯化粧して、オレたち男は鵜の目鷹の目よ。オレだってなぁ、新品のウェスタンブーツにテンガロンハットを被って、西部の開拓者らしくキメておったもんじゃ。モテたなんてもんじゃないぞ。ダンスを踊らせたら天下一品・・・・」
 いったいどこまで本当なのかと思って聞いていたが、とうとう口笛を吹きながら踊り出したじいさんの語り口調とダンスから、若かりし日の姿が目に浮かぶようだった。喜びも悲しみもすべて詰まったこの土地こそが自分の人生そのものだと語るじいさんは、こうして間近で見れば、さすがに68歳というだけあってシワクチャなのだが、改めてカッコいいと思った。
 つまり、うわべだけのファッションがカッコいいのではなく、厳しい自然とともに生き、働いてきた姿とファッションが一体化しているからこそ、カッコよく思えたのだろう。
 そこでオレは提案するのだ。農業をテーマにしたファッションショーを開こうではないかと。日本全国、北から南まで気候風土も違えば、栽培する作物の違いによっても、農作業をする服装も案外、バラエティーに富んでいるはずだ。
 もちろん、農業は格好でするものではないとの批判もあるだろう。だが、若者の間にある“農業はカッコよくない”という先入観を壊したいのだ。もっと農業を、若い人に見えやすく、わかりやすくすることで身近に感じてもらい、そうすれば、もっともっと農業労働者の人口が増えるのではないか。
 手前味噌ながら、これぞ“ファイヤー農業革命”じゃ!この記事を読んで賛同してくれる人がいたら、ぜひ“農業ファッションショー”の実現に協力の名乗りを上げてほしい。それと、あの時、熱く語り合った青年部の人たちよ。その後、連絡がないが、オレはいつでも連絡を待っているぞ。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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