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コラム  大仁田厚のファイヤー農業革命


今こそ母なる大地を守ろう
戦争は天の恵みも奪う

 本題に入る前に一つ言わせてほしいことがある。先日、サラリーマンの医療費3割負担見直しを求める署名を集めて首相に提出したところ、母親と周囲の人たちの声を聞き入れて考えを改めたことをマスコミに面白おかしく取り上げられて、すっかりマザコン扱いされてしまった。
 しかし、オレたちは皆、母ちゃんから生まれてきたんじゃないか!?
 マザコンも何も、いくつになろうと、自分の子のことを一番に考えて意見してくれる親の言うことに素直に耳を傾けて、いったいどこが悪いのか。生きとし生ける者は誰しも母親から生まれ、そして母なる大地の恵みを受けて生きているのである。そのことだけは忘れてならない。
 さて、その母なる大地を傷つけ、我々の生活を脅かす忌まわしき戦争が起こるキナ臭い匂いがプンプン漂っている。アメリカ・ブッシュ大統領が推し進めようとするイラク攻撃である。
 被爆・敗戦の痛みを知っている日本の態度が優柔不断ではいけない。小泉首相はブッシュ政権の判断を支持する姿勢を示しているが、アメリカの言いなりになるのではなく、むしろ日本がリーダーシップを取って世界に反戦を訴えるべきだ。
 戦争には絶対反対――。戦闘の巻きぞえになった子供たち、貧困にあえぎ、地雷の恐怖に怯える人々の姿……。アメリカの空爆を受けたアフガニスタンや内戦で傷ついたルワンダの実情をこの目で見てきただけに、その思いはひとしおだ。
 度重なる外国の侵攻によって、すっかり荒れ果ててしまったアフガンの畑。そこには、数年前までたくさんのブドウが実っていたという。かつては大人から子供までみんなで収穫を祝って、ブドウ刈りをしていたのだが、今はどこに地雷が埋まっているかわからない。実際に子供が地雷に吹き飛ばされて、足を失ってしまった。
 そんな話を聞き、車を走らせていると、ある農家の前に日本で言うウリのような大きな果物が成っているのを見つけた。なんとそれはメロンであった。その大きなメロンを食べさせてもらったのだが、これが実に甘くて瑞々しかった。
 お礼にお金を払おうとすると、その家の人は「お金はいらない」と受け取ろうとしない。荒れ果てた畑を機械の力ではなく、人間の力でやっとの思いで耕し、そうしてまた得られるようになった自然の恵みを、みんなで分かち合いたいのだと言う。
 それを思うと、あれが嫌いこれが嫌いと偏食する日本の子供たちは、なんと贅沢なのだろう。最近は親までが給食の献立を見て、「ウチの子はこれが食べられませんから」と言ってくるのだというではないか。
 ガキの頃、ごはん茶碗に飯粒を一つでも残すと、おじいちゃんに殴られて、「これは農家の人たちが丹精込めて育てたお米なんだ。天の恵みに感謝しなければいかん」と説教されたものだった。
 食に対してもっともっと感謝の気持ちを持たなければいけない、そして天の恵みを育む母なる大地を守らなくてはいけないと、痛切に感じる今日この頃である。 (2003.2.26)


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