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コラム ―― 農民は考える
集落が変わる

 「集落営農」ナンテ言われると、どこの国の話かナと思ってしまう。私が知らないだけで、日本のどこかで「集落営農」をやっているところがあるのだろう。
 岩手県(直接支払制度の報告書)は「従来の集落営農とは異なる、兼業農家の職種を生かした新しいタイプの集落営農組織が必要である」(意訳)という。県はどこの集落を念頭において、このような文を書くのであろうか。私には理解不能である。「水路、農道、農地の集団的対応が困難になれば、一気に耕作放棄になる」とも言う。これは分かる。この2ツの文をつなぐと、「集団的対応が困難になると、耕作放棄になるので、新しいタイプの集団的対応をする」ということになる。
 アレ・マーである。新しかろうと古かろうと、集団的対応なんてできなくなっているのだ。米もダメ、肉牛もダメ、りんごもダメ・・・・つまり、営農そのものが成り立たないのダ。集団的対応が困難なら個人で対応するしかないが、これもまたむずかしい。
 さて、直接支払制度はJAを通さず直接農家に又は集落に支払うこと、と実際に仕事した人に払い、その人は収入の税務申告をすること、この2ツのことで、大きく集落を変えると思う。
 まず「実際に仕事をした人にカネを払う」であるが、これは集落以外のどこでもやっていることでしょう。でも、集落は違う。
 集落はたとえば、みんなで草刈をすると、その草刈代金は集落の口座に入り、その日都合が悪くて草刈を出来なかった人からは1日いくらでカネをとる。
 「みんなで草刈」は強制である。ところが、集落として、そのカネで飲み会をやる時は、自由参加である。「とる」方は強制、使う方は自由である。この「とる」方は強制、使う方は自由という集落の「原則」は、強制的にとった税金を60兆円銀行につぎ込む日本の「経済原則」と全く同じものである。
 直接支払制度の導入によって、この集落の「原則」が変わる。
 第2は「JAを通さず直接払う」である。私の集落の農家組合(農協の上部?組織)は来年度合併する。今でさえ、農家組合総会等の出席率は20%程度なので、合併農家組合の出席率は10%以下になるでしょう。
 また、農家組合の予算は10万円単位だが、一方、直接支払制度の集落の予算は1集落当たり、500万円とか1000万円とか、ケタが違う。さらにJAを通さないので、指導者であるJA職員の余計な口出しがなくなる。これらのことにより、農家組合は有名無実となり、営農より生活に重点を置いた本来の集落活動が行われるようになる。
 来年からはじまる40万戸政策で、仮に50戸の集落の内2〜3人だけが所得補償を受けることになると、これも集落を大きく変える要因になる。(岩手県東和町・渡辺矩夫)


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