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コラム ―― 農民は考える
転作と本作

 減反政策は約40%の稲作を放棄し転作せよという。
 稲作用につくった水田なので大豆や麦のタネをまいたところで、採算の合う収量はとれない。暗きょなんて効かないのだ。
 稲作なら、少々の赤字でも作付けする兼業農家や高令者はいるが、赤字で転作する人はまずいない。
 そこで、転作というと、転作助成金をいくら出すのという話になる。国の転作助成金は、3ヘクタール以上の団地が対象である。
 町には3ヘクタール以上の団地はない。多分どこの中山間地でも転作用に3ヘクタール以上まとまった農地はとれないと思う。
 つまり、国は3ヘクタール以上という条件を付けることによって、実質的に中山間地を助成対象外にしている。中山間地は転作しなくてもいいヨ、放棄しなさい。これが国の政策である。これでは減反割当など消化できないので、町は50アール以上の団地に大豆なら10アール2万円の転作助成金を出している。
 これに、とも補償2万円を加えて10アール4万円の助成金があるから、大豆をつくるのかといえば、答えはノウである。10アール4万円では赤字か、せいぜい日当1000円にしかならないからである。
 宮城県古川市では、大豆の集団転作に取り組んでいる。テレビを見た限りではそれなりに手を加えても、結局、農家の収入は転作助成金だけであった。
 そこに「知恵者」が現れて、「つくるのをやめて、助成金だけもらうべ」という訳である。大豆や麦など、とれないことがはっきりしているのに、転作せよというならタネをまきましょう、でも後は知らないヨである。この転作は、「一本の草でも抜きとる」「手抜きをしないでキチンとつくる」という勤労の美徳を、頭から否定するものになっている。よく言われるように減反は農家の精神的廃業をもたらしている。
 転作はやめねばならない。転作を本作に切り替える時期はとっくに過ぎている。
本作としての、大豆、麦、エサ米は最も効率の良い、二毛作地域の大区画圃場で、50〜100ヘクタールまとめて作ることだと思う。
 稲作は日本でいくら大規模化しても、外国に比べればケタが違うのであるから、安い米づくりもよいが、同時にうまい米づくりを目指すべきだと考える。
専門家に聞きたいが、うまい米は、平場ではなく、中山間地内の中間地の米ではないのか。10俵とれない水田から、うまい米がとれるのではないのか。
 食味と収量は反比例する。米だろうが、トマトだろうが、一定限度以上の収量は食味を落とす。
 うまい米づくりとして、中間地の水田は全て稲作とし、全て環境保全型または有機栽培とする。2〜3ヘクタールの稲作では、生活できないので、森林、里山、水源農地などの保全を主たる職業とする兼業稲作である。(岩手県東和町・渡辺矩夫)


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