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コラム ―― 農民は考える
長野県知事選で思ったこと

 みのもんた氏のテレビ番組に、毒(添加物や農薬)、毒(ダイオキシンやPCB)というパネル表示が出てきた。さらに、みの氏は、無登録農薬を使用した生産者を、殺人罪で告訴すべし、という意味の発言をしていた。この番組は、昼なので、サラリーマンは見ていないが、専業主婦(食品を買う決定権を持っている人)の視聴率はかなり高いようです。
 この番組は、「農薬は毒」が主婦の常識であることを示している。
 「農薬は毒」が主婦の常識となっていることに、農業(農薬)業界の人達は気がついているのであろうか。
 長野県の知事選を見て思ったことは、ベテラン県議が、40万票の大差を読めなかったということであり、視野が狭いと何年議員をやろうが、県民の動向さえつかめない、ということである。
 狭い業界から一歩も外に出たことのない人達も同じである。
 雪印が潰れた。食べものでデタラメをやった企業は潰す・・・・ここまで日本の消費者が力をつけてきたことに、雪印の社長以下気がつかなかった。
 雪印が潰れているのに同じことをやる、日ハムは、会長以下食肉業界から外に一歩も出たことがない、のでしょう。
 雪印が潰れたのをみて消費者パワーにピンときた企業は、中国産ホウレン草の輸入業者のように、自主的に残留農薬を検査し、自主的に中国野菜を回収した。
 40万票もの大差に気づかなかったもうひとつの理由は、知事と県議の間に対話が成立しなかったことにあると思う。
 食べものの安全性についても、生産・流通業者側と消費者側の間には対話が成り立たない。
 生産・流通業者側の安全性原則は、危険であることが証明されない限り販売する、であり、裁判沙汰になるとかえって損をするから回収するのである。一方、消費者側の安全性原則は、安全であることが証明されない限り食べない、である。
 前者は、売るとか回収するとか、食べものを100%商品と見なした原則であるのに対して、後者は、食べものの商品としての側面を無視した原則になっている。したがって、この両者の間に対話は成立しない。
 思い出したように「農薬は安全」なんてチラシを配る人達は、自分達の業界からたまに外に出て世間を見ているのであろうか。「農薬は毒」という人達と対話が成立しないことに気づいているのであろうか。
 「農薬は毒」「農薬は安全」「どちらとも言えない」の3つの設問で、なにを買うかその決定権を持っている専業主婦のアンケート調査をやれば、一千万票の大差をつけて「農薬は毒」に○印が付く、と私はみている。 (岩手県東和町在住・渡辺矩夫)


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