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コラム ―― 農民は考える
日本農業のあるべき姿は?

 中山間地域等直接支払制度に、「農業従事者1人当りの農業所得が、県庁所在地の勤労者の1人当り平均所得(盛岡市4047千円)を上回る場合は、原則として直接支払いを受けることはできません」という項目がある。
 つまり、サラリーマンの平均所得以上を稼いでいる百姓にはカネを払わないヨという規定であり、百姓には払わないが、平均所得以上のサラリーマン(公務員や農協職員の兼業百姓)には、カネを支払います、という規定である。
 直接支払いに限らず、減反もそうだが、サラリーマン百姓を優遇し、専業農家を見下す・・・・これが農政の基本的な視点になっている。
 農業はイヤだといって、学者になり、公務員や農協職員になった人たちが農政の実務を担当しているから、サラリーマン百姓優遇の農政になる。日本の農政の最大の欠陥がここにある。
 私に決定権があるなら、たとえ100人中2〜3人が専業農家であっても、専業農家がいなければ、サラリーマンは農業に従事できないのであるから、まずこの2〜3人の専業農家を大切にする。2〜3%の専業農家を大切にするということは、直接支払制度については、税金で給料をもらっている人は全て支払いの対象外とするし、また、減反については、「税金で給料をもらっている人は20アール以上の稲作を禁止」とする。さらに、毎月農協から給料をもらう役職員も20アール以上の稲作を禁止する。ここまでやってから、私なら、一般の農家に減反協力を依頼する。
 集落営農や、農作業受委託も、サラリーマン百姓(だんな様)が専業農家(小作人)に最低賃金以下で農作業をやらせるという基本的な考え方で貫かれている。だから、農作業の標準賃金は最低賃金を基準にして決めているようだ。
 標準賃金を決める人たちは自分がもらっている給料を基準にして、農作業(小作人)の標準賃金を決めていないのである。農協職員にかかる人件費は、1人当り約500万円である。年200日とすると、日当2万5000円(役人はこの2培になる)。農協職員と同じ日当2万5000円を基準に、作業委託費を決めるのであればスジが通る。だが、現実は農作業の日当は7000〜8000円である。ここまで専業農家は、サラリーマン百姓(役人や農協職員)にバカにされている。
 サラリーマン百姓は、土、日に農薬をまいて、トラックを運転するだけの稲作しかできない。大豆も麦もつくらないし、環境保全型農業もできない。このようなサラリーマン百姓を大切にすることが日本農業の「あるべき姿」なのか。答えはノーでしょう。(岩手・東和町在住) 


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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