農業協同組合新聞 JACOM
   

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農業協同組合研究会

「合併農協の課題 −参加型運営のトライアル」
農業協同組合研究会 第4回シンポジウム


第4回シンポジウム

 農業協同組合研究会(会長:梶井功東京農工大学名誉教授)は11月25日、東京都内で第4回シンポジウム「合併農協の課題―参加型運営のトライアル」を開いた。広域合併農協にとって今後の事業、運動を推進するには組織基盤である組合員の参加、参画が課題となっている。シンポジウムでは、女性部の活発な活動や出向く営農指導などの事例報告をもとに参加者約100人で「参加型運営」について議論した。

◆組合員との距離縮める

(司会)北出俊昭 前明治大学教授
(司会)北出俊昭
前明治大学教授

 合併農協が参加型運営をどう実現するか――。JAにじの足立組合長が強調したのは教育文化・福祉活動の重要性だった。
 参加者からは教育文化活動は直接的な収益を生まないという問題をどう捉えるかとの質問もあったが、足立組合長は「たしかにさまざまな研修、活動のコストはJAの負担になる。しかし、教育文化活動を通して組合員との日常的なふれあいが生まれ、それが結局、JAへの信頼となり信用・共済などの事業利用につながっていく。また、介護など福祉、葬祭事業など地域住民が願う事業展開は地域にも貢献し収益にもつながる」と指摘した。
 また、都市住民が利用する体験農園のサポーターも女性部員がボランティアで取り組んでいるが「やはり人の役に立っているという感動があるからサポーターになる人も出てくるし、事業も継続する」など組合員の自発性を引き出す働きかけがJAの課題であることも示した。
 一方、合併によって「旧JA時代にくらべて組合員にJAの存在感が薄くなったのは確か」とJAはが野の杉山常務は現状を指摘した。合併前の少ない組合員数であれば、組合員にも「自分がJAを支えている。だから意見を言うという意識があった。しかし、規模が大きくなったことで組合員自身に積極的にJAに声を伝えようという意識が薄らいでいるのは事実だ」という。
 ただし、合併しなければ生産者が必要としている施設整備なども実現できなかったのは事実で、主力品目のいちごでは毎年10人前後の後継者が生まれていることなども強調した。

◆組合員が納得できる組織づくり

 合併農協のあり方と合併メリット発揮、そして組合員参加の実現が議論となったが、参加者からは「やはり作物を基盤とし、組合員が納得できる組合員組織づくりをしておくべきではないか」との指摘もあった。また、村田教授は合併農協といっても組合員数や合併エリアの違いがあり、規模、条件もふまえた対応の検討の必要性も指摘した。
 司会の北出俊昭前明治大学教授は議論をもとに、大規模合併JAは組合員のニーズにいかに対応した活動を強化するか、「意識的に考える必要」があること、地域内のさまざまな住民も含めた組合員の自発性を引き出し、そこから事業や地域づくりをしていくことを指摘するとともに、JAトップのマネジメントの重要性も強調した。

 

教育文化活動なくしてJAの発展なし

JAにじ(福岡県) 足立武敏代表理事組合長

 

足立武敏代表理事組合長
足立武敏代表理事組合長

 JA運動は組合員を経済面、健康面、精神面で豊かにする「幸せづくり」であり、それを協同の力によって勝ち取る運動だと考えている。JAはこれまで「営農」を中心としてきたが、組合員が多様化しとくに都市近郊JAでは営農だけでは幸せになれない。決して営農を軽んじるわけではないが生活文化福祉活動も重視して車の両輪とすべきではないか。それが専業農家も兼業農家も、また今はまだ組合員になっていないが将来はなるかもしれない地域住民の方々も願っていることではないか。
 その生活文化福祉活動も営農も今は女性が担い手。しかし、女性部員は減少している。そこでJAでは地域単位の組織を重視しながらも、グループ活動を中心にした組織改革に取り組んできた。「星の数ほどグループを」を合い言葉に現在、農産加工や野菜づくり、ふる里伝承などさまざまな活動をするグループが382に増えた。女性組織の代表者もこのグループ活動の代表者がメンバーとなるように改革した。また、生活指導員は4人だが、女性のなかから19人に文化協力員になってもらい、月1回の研修を受けて、グループ活動の現場で指導にあたってもらっている。たとえば、小学校での食農教育の現場でみそづくりを子どもたちに指導するなどの役割である。
 グループ活動のお手本になるのは「家の光」。ただちょっと油断すると部数は減少するため、普及には女性部員だけでなく役職員もあたり、一度落ちた部数の再増部を達成した。
 部数増とともに女性部の活動は活発になり、たとえば地域の映画鑑賞会も参加者が増えて今では3つの文化会館で同時に開催している。お月見読書会にも毎年500人が参加している。そうした場では常勤役員も必ずあいさつをするなど顔を出すことも大切だ。
 今後のJAにとっては女性の参画はぜひ必要と考え、正組合員割合25%を目標に掲げて運動し今年度26.1%と目標を超えた。ただし、女性総代20%は16%にとどまった。職員には、たとえば集落の農事組合長に具体的に、この女性とこの女性に総代をお願いできないか、と働きかけているのか、運動とは奔走して努力することだと強調している。
 デイサービスセンターの開設など福祉事業は、総代会での女性総代の一言から生まれた。ホームヘルパーの資格をJAの研修で取得し助け合い組織を作っているがもっと女性たちが働き役に立てる場はできないか、というものだった。今はひとつの施設では不足するほどになり、集約化で不要になった選果場を利用して増設した。
 一方、営農面では園芸品目の価格低下が深刻で、市場外流通を増やすことを目的にその拠点としてファーマーズマーケット「にじの耳納の里」を16年に開設した。女性、高齢者を中心に出荷者は850人いる。
 女性総代は総代会の質問、意見もきちんと整理して発言する。われわれ役員も何がJAに可能であり何ができないか、また見通しはどうかといったことを話さなければならない。女性の参画でJAも変わらなければならなくなった。

(2006.12.4)


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