農業協同組合新聞 JACOM
   
この人と語る21世紀のアグリビジネス
品質と新鮮さで勝負
「挑戦の遺伝子」継いで酪農とともに生き残り図る
協同乳業(株) 長岡満夫社長
インタビュアー 坂田正通 本紙論説委員
協同乳業(株) 長岡満夫社長
 酪農と乳業を取り巻く情勢について長岡社長は「WTO農業交渉、自由貿易協定交渉の行方、そして今秋に迫った家畜のふん尿処理施設の整備」などを挙げ「決して楽観を許さない」とし、「特に、乳製品の関税引き下げや非課税枠の拡大は、乳業だけでなく、酪農にも大きな影響が及ぶ」と指摘した。しかし「市乳については品質と新鮮さで輸入品より優位にあり、また乳製品にしても、コストダウン努力と、消費者の好みに合う製品を開発していけば生き残っていける道はある」と展望した。同社の業績についても「利益を出せる体質になりつつある」と力強く、また、今年4月に新3カ年計画をスタートさせ、「このステージでは株式上場に挑戦する」と意欲的だった。

◆「酪農との共生」脈々と

 ――「協同」を冠した社名の由来などをお聞かせ下さい。

 「酪農家や農協と一緒につくった会社です、という意味です。昨年、創立50周年を迎えました。創立の背景には酪農運動があります。創業者は吉田正氏(長野県出身、全国農業会常務)で、酪農振興への思いは熱く、今も当社には酪農との共生という理念が引き継がれております」

 ――事例を何かお話下さい。

 「そうですね。当社の主力集乳地区である長野県に獣医13人を配置しているという体制が1つあります。農家の乳牛を個別にきめ細かく管理し、病気の予防、治療から雑菌対策の指導などまでしています。大手乳業メーカーでも1人か2人しかいない獣医が当社には13人もいるのですから、これは自慢です。このことは、今後のトレーサビリティ(履歴管理)拡充にとっても意味があると思います」

 ――株主はどこですか。

 「現在の筆頭株主はJA全農です。その他農林中金、農協、名糖グループ等が株主です。協同会社ではないものの、農協色の強い乳業会社といえます」
 「しかし創立時は資本の大半と運転資金を名古屋精糖(株)に依存しました。また同社の社長が協同乳業の初代社長となりました。このためブランド名は最初から『名糖』でした。平成3年からは『メイトー』です」

◆「競合」でなく「補完」

協同乳業(株) 長岡満夫社長
ながおか みつお
昭和17年1月秋田県生まれ。40年3月北海道大学農学部卒。農林中央金庫入庫、組合金融第一本部推進部長などを経て、平成9年常務理事。12年6月北海道糖業(株)顧問、同年12月専務。15年6月協同乳業(株)代表取締役社長。

 ――では事業概況について。

 「当社は総合乳業メーカーで飲用牛乳から乳製品までを生産しています。子会社を除く本体の売上構成は、市乳関係が3分の2、あとが乳品とアイスなどです。市乳関係の内訳は、半分が飲用乳で、あと半分がヨーグルトやプリンなどです」

 ――用語が難しいですね。乳品というのは何ですか。

 「バターやチーズです」

 ――乳品などをつくらないで、利益の出ない飲用乳を主力商品としている会社は苦しいと思いますが、どうですか

 「牛乳でもうかっているのは、値段の相対的に高いごく一部の差別化商品だけでしよう。一般的に牛乳は、水を運ぶようなもので物流コストが大きいのです。飲用乳にウエイトをかければ、当然、苦しくなります」

 ――日本ミルクコミュニティ(株)の製品である「農協牛乳」「メグミルク」と「メイトー牛乳」の棲み分けはいかがですか。

 「飲料は物流費低減のため工場配置を各地に分散させています。しかも当社は他社への生産委託を極力増やしながら、ここ5年間で自社工場を10から5へと再編統合しました。その結果、メグミルクの工場とは競合関係がほとんどなく、むしろ補完関係にあります。酪農家・農協と関係の深い両社は、お互いに切磋琢磨して協力できるところはしていこうと考えています」

◆進化過程の若い会社

 ――ところで、協同乳業の商品開発には「日本初」の工業化などというのが多いですね。

 「確かに。振り返ればまず昭和30年にスティックつきの『アイスクリームバー』を出し、くじや長嶋茂雄選手のキャラクター起用が子どもたちに受け、工場前に仕入れ業者の車が並んだと聞いています。これはリニューアルで今も売れているというロングランのヒット商品です。翌31年には、牛乳パックを三角形にしたテトラ牛乳の生産を始めました。主なものだけで「日本初」は合計8件です」

 ――特徴のある会社ですね。

 「そうなんです。創立50周年といえば普通は成熟期なのに、うちはいまだに発展途上、進化の過程にある若い会社だと思います。私は創業以来の当社のDNAとして(1)酪農との共生の精神(2)品質のメイトーといわれた品質へのこだわり(3)新しいものにチャレンジする進取の精神、の3つを挙げています」
 「開発については、1番手がリスクを取って開発すると、2番手がそれをうまく改良して結局1番手を食ってしまうことがあります。うちは、そうした2番手戦略の会社にはならないようにしようといっています。リスクを伴っても1番手として挑戦するほうが元気が出ます」

◆株式上場にチャレンジ

協同乳業(株) 長岡満夫社長
 ――リストラはどうですか。

 「前社長は『プラン21』という5カ年計画の中でタイミングよく10から5へと工場を再編集約してくれましたが、要員は新しい事業に振り向けたりして希望退職などをやらないで、基盤整備を一応、完了しました」
 「そして4月からはソフトの整備を中心にした『ネクステージ21』という3カ年計画をスタートさせました。この名称には株式上場に挑戦していくのが次のステージだという意味をこめました。上場をねらいます」

 ――上場とはすごいですね。

 「上場すれば製品に対するお客の信頼度や評価の高まりとか人材が集まりやすいとか、いろいろな効果がありますからね」

 ――この3月期の決算見込みはいかがですか。

 「昨年の冷夏の影響とか低価格取引の中止などで売上げは少し減りましたが、経常利益は目標達成です。利益を出せる体質になりつつあります。乳業大手の経常利益は売上げの3%程度ですが、当社は当面2%を出したいと対策を講じています」

 ――需給の変動などによる余乳の処理対策はどうですか。

 「余乳は脱脂粉乳やバターなどになりますが、現状は脱脂粉乳が大変な過剰となり、業界あげて対策に取り組んでいます。しかし当社は、脱脂粉乳の生産よりも購入の方が多いので、影響は少ないと思っております」

◆チーズで仏社と合弁

 「ところで、チーズについては世界トップクラスのボングラン社(フランス)との合弁事業で長野県に製造工場を建設し、昨年10月から稼働しました。これまでもメイトーブランドの特殊なチーズを生産していましたが、今後は合弁でフレッシュチーズの生産を伸ばします」
 「欧州のチーズは米豪などより品質は高いけれど、ユーロ高ですから、日本にも競争力があるんじゃないかと思います」

 ――最後に、酪農の展望ですが、長持ちのするロングライフ牛乳などの輸入が増えてくるのではありませんか。

 「ロングライフ牛乳はずっと以前からありますが、もし需要が伸びれば、船でどんどん輸入されることになると思います。しかし、日本では新鮮なうちに飲む習慣があるせいか、ロングライフ牛乳は余り好まれません。そこに日本の酪農が生き残っていく道があります」

◆賞味期限と消費者教育

 「最近はESL牛乳が出ていますが、牛乳は一回封を切ってしまえば、できるだけ早く飲んでしまわないといけません。いくら賞味期限が2週間などと表示してあっても、開けた後では2週間以内でも品質に問題が出てきます。賞味期限というのは封を切らない間のことですからその点、消費者教育の徹底が必要です」

 ――長持ちのする牛乳は、どんな処理をしているのですか。

 「完全に殺菌して無菌の状態にしているわけです。これに比べ一般の牛乳は120〜130度の高温で殺菌しますが、その時間は約2秒です。それ以上やると、たん白質や脂肪が変化し、においも出てきて、風味に問題が生じます。だから62〜65度で30分加熱する低温殺菌もあります。つまり品質を変化させないように殺菌をして、消費者に届けているわけです」

東海工場 東京工場
東海工場 東京工場

協同乳業株式会社(東京都板橋区幸町)
▽昭和28年設立▽資本金7億9038万円▽製品はチルドドリンク、同デザート、ヨーグルト、アイスクリーム、フローズンケーキ、チーズなど▽売上高約620億円▽経常利益約5億円(16年3月期決算見込み)▽従業員約500人▽研究所1▽工場5▽子会社6社(連結ベース決算見込み約800億円)▽グループ会社7社の中にはJA全農との協同生産工場として2社がある。

インタビューを終えて  
 長岡社長は、秋田県能代の生まれで北大農学部から農林中金に入る。結婚が福岡支所時代のため本籍は福岡県になっている。農中常務理事から北海道糖業(株)専務を経て、請われて昨年6月協同乳業(株)の社長に就任。農中から直接乳業の責任者になるのと違って、糖業時代の経験が生かせる。砂糖原料のビートも、牛乳や乳製品も農業と人間の健康を考える面では共通点があるという。日本の酪農家とともに共生するDNAが協同乳業には流れていると、社内体質に自信を示す。会社の基盤整備は完了し、経営は安定期に入った。近い将来株式上場を目指す。社員からは、「10年前から聞いています、何時ですか」と逆にはっぱをかけられている。ゴルフは年間アベレージで90を切るのが目標。クラシック音楽、ガーデニングが趣味。千葉県成田の自宅には桜をはじめ、オールシーズンいつでも10種類以上の花が楽しめるよう木や花を植えている。(坂田)

(2004.4.15)

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