農業協同組合新聞 JACOM
   

検証・時の話題

流通最前線 米の流通と消費動向

変動続く、コメの流通と消費者の行動 新米指向崩れる

 作況「96」の不作の18年産米だが、市場に米不足感はなく価格は上昇していない。過剰作付け分があるために需給が均衡しているというのも理由のひとつとされているが、消費者の行動の変化から流通の現場ではさらなる異変も起きているのではないかという。前回に引き続き最近の米流通と消費の動向について、荒田農産物流通システム研究所代表の荒田盈一氏が分析した。

◆「不作」要因だけでは望み薄の価格上昇

 米穀流通業者は相対取引と入札取引で発生する「現実」と「原則」に揺れている。販売業者における必要数量の確保は全農が18年産米から導入した特定契約による相対取引にシフト、そのためコメ価格センターの入札取引は上場数量や落札数量が縮小、低迷を極めるという「現実」に遭遇している。
 買い手の販売業者は「現時点で必要玉の手当てが全農との相対取引で済んでいる。生産地からの直接仕入も潤沢であり、入札取引での数量確保は必要としない」とし、売り手の全農も「販売業者の注文に応じた相対取引で対応しており、低調な入札取引が単純に売れ行き不振を反映しているわけでない」と構える。
 一方、相対取引での数量確保を見送った販売業者は入札取引市場に参加を迫られる。従来、価格形成の「原則」は需給関係が過剰基調にあっても当年産の不作を理由に「価格は上昇した」。18年産は作柄が低下した上に、上場数量の減少、さらに、上場で提示した価格を下回る応札は未落札とする下限価格制の導入の条件も加わり、入札価格の上昇が「原則」である。しかし、「原則」は崩れ、「現実」が勢いを増している。
 その中で、需給関係は18年産の生産目標が833万tと設定され、作況96で生産予想数量は800万tに修正された。しかし、生産調整に未参加者分の生産量が加算され、「現実」の生産数量は840万tと見込まれている。一方、需要数量を844万tと設定、単年度の需給は4万tの不足としたが政府備蓄米の77万tでカバーする。今まで、取引価格や需給調整は800万tを基準に用いていたが、「現実的」な数量である840万tに変更した。正常な姿に戻したと評価されているが、平年作で換算すれば単年度の供給数量は生産調整未参加者の43万tと833万tの合算で873万tであった。
 需給均衡を図るには生産調整数量の約30万t増加を迫られる。さらに19年の需要数量は835万tで想定されており、その数量は約40万tに拡大する。また、消費量の減少が想定以上であれば生産調整数量の一層の拡大が待ち受けている。米穀関係者においてこの状況は織り込み済みであり、「不作」を理由にしただけの価格回復は望み薄だ。いずれにしても制度的な補助金や助成金を拒否し、生産調整に加わらないことを宣言して自由な生産を認めた政策効果は如何なく発揮された。

◆好調な全農ルート販売の裏側に隠れているもの

 米穀関係者にとって「販売実績」も悩ましい。全農は18年7〜10月で扱ったうるち米の販売実績を97万5千tと明らかにした。昨年の販売実績73万5千tに対し、24万t(33%)増加した。一般的に活況な販売活動が期待されるはずだが、販売前線にはその欠片も見えない。その原因は97万5千tの内訳にある。取引形態の構成は相対取引で90万7千tの93%、入札取引で6万8千tの7%、昨年の相対86%、入札14%に比較して相対取引のウエイトが一段と進んだ。その結果、低調な入札取引を一層後押しした。
 全体の販売数量だけでなく、前年産(古米)の販売数量も注目される。18年で販売された17年産は67万9千t、これに対して17年(同期)で販売された16年産は40万5千t。「前年産古米の販売数量」が27万4千tとその増加率は68%にも増加した。一方、18年で販売された18年産は29.6万t、17年で販売された17年産は33万tと「新米販売数量」は減少した。
 この期間における販売環境は17年産「事前年間取引」の引取りが遅れ気味で進展した。しかし、引取期限は10月末に設定されている。そのため販売関係者は前年産米の購入数量を「販売実態の好調さではなく、販売進捗度の遅れを証明するもの。販売環境が好調であれば18年産の購入量も平行して増加するはず、18年産米仕入数量の減少は低迷する販売の実態を裏打ちしている」と分析する。
 外食事業者と直接取引する生産者も「外食店の消費量減少で17年産の引き取りが遅れ、新米の搬入が先延ばしになった。11月5日に新米を初出荷したが搬出は昨年より3週間も遅れている」と懸念する。「入札市場」「価格形成」に加えて「販売実績」にも燭光の兆しは見えない。

民間流通米の入札価格、落札率の推移

◆消滅した消費者の新米ニーズと販売業者の新米商戦

 本来であれば、新米時における古米の大量在庫は販売業者にとって死活問題だであり、「17年産の古米処理」で大騒動が懸念された。しかし、関係者が「17年産の古米処理は順調に捌け、全く騒ぎにならなかった。数年前を考えれば奇跡的」と口を揃えるが、「古米の順調に捌けた理由は不作に起因するものではなく、消費者の新米ニーズ消失も一因」と腑に落ちない様子で首を傾げる。
 かつて旧盆の新米セールに凌ぎを削り、熱気に包まれた時代があった。その熱気が消失して久しい。その原因として、新米が7月中にバラバラで出荷されることから(1)季節感(旬)の喪失(2)量的なインパクトが消えてセールを打てない等の生産側の事情、一方の販売業者は、(3)潤沢な低価格の政府米の売却(4)保管技術の向上で古米の食味や品質が保持され新米の必要性が薄れたこと、また、(5)新米価格が旧年産を下回る状況が続いた等が指摘されている。しかし、販売業者の本音は「新米の積極的な販促活動によって高価格の古米在庫が拡大する悪循環を断ち切りたい」からとされる。販売業者の経営の立場からは当然の措置だが、これでは新米販売の熱気など生まれない。
 また、外食事業の関係者は日本人の味覚識別能力の減退を挙げる。かつて、ご飯やライスを重視する飲食店は「炊飯専門の従業員」を確保していた。この従業員がもっとも神経を使って炊飯するのが新米に切り替わる時期。消費者に説明なしで古米から新米に切り替えると「ご飯やライスが変わった」とクレームが付けられたという。そのため古米と新米の比率を徐々に切り替えることで消費者の舌を慣らしていった。今日、古米から新米に直接切り替えても気が付く消費者はほとんどいない、と嘆く。これでは、あえて新米に切り替える必要性はない。反面、古米処理に好都合だが「ご飯やライスに対する消費者の識別能力の消失と無関心が年間を通じて継続すればコメ消費量の減少に繋がる」と心ある外食事業者は懸念する。

◆米穀専門店からの米購入がわずか6%に減退

 消費者の「購入先」も一変した。農水省の調査による16年度の消費者の主たる購入先はスーパー33%、農家直接販売21%、生協と親兄弟から貰う、がそれぞれ14%、米穀専門店とその他がそれぞれ6%、農協4%、ディスカウントストア2%、百貨店1%で構成される。スーパーは6年の21%からほぼ一貫で漸増、農家直接販売は6年の14%から21%に増加したが12年に20%到達後、停滞した。親兄弟から貰うは作況に連動し、豊作と不作で14%〜24%を行き来する。生協(6年は18%)と農協(同9%)の比率は漸減、米穀専門店の激減は目を覆う。
 米穀専門店は6年が34%、「米騒動」対応の「セット販売(国内産5、外国産単粒種3、外国産長粒種2)」が消費者の批判を受け7年には26%に激減した。
 さらに「生産と販売の自由」が謳われた食糧法に移行した8年にはスーパー(24%)と米穀専門店(23%)が逆転、その後、両者の差は拡大を続け、16年にはスーパーの33%、米穀専門店の6%になった。それでも米穀専門店の取扱数量は購入量目が大きいことや中小の飲食店を販売先にしており、6%までは減少していないが一般消費者の購入先対象としては消滅の事態を迎えている。
 また、販売数量のスーパーと米穀店の逆転は米の販売手法の転換を意味する。専門米穀店の特徴は「顧客管理、対面販売、配達」であり、スーパーは「商品管理、セルフ販売、持ち帰り」にある。米騒動で米穀店のセット販売は「売り惜しみ」と批判を受けた。これに対してスーパーはセットの比率をそのまま陳列した「売り切り」販売で対応したが消費者は選択の自由を支持した。

◆変わる消費者にとっての「安定供給」

 この事態は消費者による「品切れ」の認知であり、「年間を通した同一産地品種銘柄の価格と数量の安定供給」という旧来型の安定供給が新たな側面を迎える。消費者は購入していた商品(銘柄)が高価になれば他の商品に移行し、売り切れれば同価格の商品に移行することを厭わない。
 消費者は「価格と数量の安定供給」を「年間を通した同一産地品種銘柄」に求めてはいない。スーパーを含めた販売業者は旧来の「安定供給」の柵(しがらみ)から抜け切れず、「売り切れ」や「売り切り」を避けているが、「産地品種銘柄の品切れ」に舵を切った時、産地間競争は想像を絶する熾烈な戦いの波に飲み込まれる。

(2006.12.5)


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