農業協同組合新聞 JACOM
   

検証・時の話題

本紙調査 19年産米の作柄
19年産作況は「99」か?
全国308JAの米担当者調査結果

 本紙は19年産米の作柄などについて8月末にJAの米担当者への聞き取り調査を行い、このほどその結果をまとめた。全国308JAの作付け面積、平年収量、担当者の見通し作況指数などをもとに集計した結果、作況は全国で「99」という結果となった。
 19年産については概ね天候が良好だったことから豊作気味の予想もあったが、現場担当者の実感では7月の低温、日照不足などの影響で「平年並み」か「平年並みが確保できれば」という声が多く推計結果もそれを示した。道府県別にみても豊作が見込まれる地域はなく、逆に南九州では不良、著しい不良という地域もあり、本調査期間中、「一等米は皆無だ」と深刻な事態に現場で対応に追われる声も聞かれた。

北海道、東北など7月の低温が影響。作柄は平年並みを確保
南九州では台風被害で作柄悪化、一部地域では「著しい不良」も

19年産作況指数

一等米比率低下で苦悩する地域も

◆ 豊作の予想は聞かれず

 調査は8月28日から31日かけて電話で実施。東京都を除く46道府県のJAを対象にし18年産米の作付け面積の6割カバー(全国ベース、道府県ベースとも)を目標に米主産地JAを中心に協力を依頼した。
 その結果、全国300を超えるJAから協力が得られ、そのうち集計した308JA合計作付け面積は18年産対比で全国ベース63%のカバー率となった。
 聞き取り調査項目は「JA管内の19年産作付け実面積」、「管内の平年(基準)反収」、「調査時点での作況指数見込み」、「一等米比率(見込み)」などのほか、各地の生育特徴を聞いた。
 管内の平年(基準)数量に地域によって差がある場合には、集計時に可能な限り作付け面積比率をもとにウエートをかけ生産見込み数量などを出した。

◆不稔発生の声多く

 そのうえで、308JAの管内平年収量と担当者の作況指数見込みをもとに集計した結果、作況指数は全国で「99.2」となった。
 道府県別にみても102となったのは1県のみで他は100以下だった。
 図の下欄は各地から回答があった1等米比率の数値で県内でも地域によって大きな差があることが分かる。
 北海道、東北、北陸のJA担当者からは6月までは順調な生育だったが、7月はじめに低温が続き生育に遅れが見られ、8月下旬時点では不稔の発生が一部に認められるというのがおおむね共通した見方。ただ、茎数が多く穂長も長いことから収量は平年並みを確保できそうだというが、北海道内でも作況が90を下回ると見込んでいるJAもあった。8月は高温つづきだったがカメムシの発生は少ないとの見方や、防除も効果を上げているなどのことから品質低下もあまり心配されず、一等米比率も例年並みに確保できそうだとの見方も調査時点では多く聞かれた。
 関東、東海でも平年並みかやや下回るという回答が多い。ただ、北陸や近畿、中・四国では高温が続き高温障害を心配する声も聞かれた。作況指数では中・四国は100を下回る結果となっている。
 中国では6、7月の日照不足で茎数が少ないことや登熟不足を懸念する声が多かった。また、四国では早期米の出穂後に2度の台風で影響を受け、一等米比率は10%程度と低いという。
 九州では宮崎、鹿児島といった南九州で作柄が悪く、さらに一等米比率は低下している。7月中旬の台風4号と8月初めの台風5号の影響で早期米は10%以下との見通しがあるが、「過去にない最悪の検査結果」(宮崎)と声が寄せられ、一等米はわずかに0.4%、規格外が6割以上を占めたという報告もあり事態は深刻だ。生産量としては全体で平年並みであっても、1等米比率まで含めた米の作柄には地域で大きな差が出そうだ。

◆作付け削減に現場苦慮

 本紙では毎年400を超えるJAの協力により「JAの売れる米づくり戦略」アンケートを実施し「JA米」の取り組み状況などを調査しており、18年産についても同調査で作付け面積を集計している。
 今回の調査では19年産作付け実績面積を聞き取り18年産と比較してみた。
 その結果、28府県で18年産より作付け面積が減っていたが一部地域では作付け面積の増加も見られた。JA担当者からは「生産調整への非参加者分が増加」、「都市近郊で協力が得られない」などの声が寄せられ計画生産の実効確保に苦労している状況が伺えた。
 その一方、田植え前に予定していた作付け面積よりも大きく減り、18年産に比べて10%以上作付け面積を減らしたという地域もあった。理由として多かったのは「高齢化が進み考えていた以上に米づくりをやめてしまった農家が多かった」というもの。とくに中山間地域の水田農業は「米づくりをと呼びかけているが毎年遊休地が増えている。有害鳥獣の被害も影響している」といった厳しい状況を指摘する声が寄せられた。
 全国ベースの集計では18年産より作付け面積は減少しているという結果となっている。

◆米販売に不安の声も

 調査期間中に19年産第1回入札が行われ落札数量がゼロという衝撃が産地にも走った。これから集荷、収穫を迎えるのに19年産は売れるのか、という声が各地で聞かれた。全体として平年作であれば過剰になることはないが、米の消費減退など流通事情に不安を漏らす声も多かった。
 同時にJAグループの米事業方式が内金・追加払い方式の徹底となったことで「集荷率が落ちるのではと心配」、「大規模生産者には年末にかけての資金繰りの不安が出ている」のほか、農政改革をめぐって「制度が農家を困惑させている」、「論外の米価。再生産の確保策を」、「数値よりも農家の声を聞いて」など現場のさまざまな声が寄せられた。
(インタビュー「19年産米の需給見通しとJAグループ米事業の今後の課題 JA全中・馬場利彦農業対策部長に聞く」へ)

(2007.9.13)


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