農業協同組合新聞 JACOM
   

検証・時の話題

(社)農協協会
「JA総合事業にかかる意識調査」から
調査結果その1
事業ごとの実情と取組み課題が明らかに

 (社)農協協会は、総合事業を展開するJAの実情を把握するために、各事業に分けて次のような内容のアンケート調査を実施した。
 平成15、16年度における事業実績と今後の収益の見込みを各事業ごとに聞くとともに、信用事業では収益増強施策の重点、住宅ローン、農業融資、渉外活動、システムなどへの投資などの現状と課題。
 共済事業では生命共済の契約者減少要因、失効・解約防止対策、既存顧客に対する契約増進対策や新規契約者獲得施策など。
 販売事業では、今後の販路拡大施策、青果物の市場取引状況、生産履歴記帳の状況や品目別作付面積のデータベース化などについて。購買事業では、高収益品目、肥料・農薬の予約・当用割合、事業コスト削減施策、当用購買における競合状況、肥料などの戸配送機能状況など。
 指導事業では、営農指導員の増減、営農指導における情報システムの活用状況、営農指導における重点施策など。
 さらに、今後新たに取り組みたい事業、農家次世代・員外利用者の拡大施策などを聞くとともに、総合事業に関する考え方やメリット、店舗統廃合の取り組み状況についても聞いた。
 その主要なものを掲載することにした。

【調査方法】

◆対象JA:各都道府県ごとに組合員数が上位7位までのJAと上記以外のJAで特色ある取り組みや実績のあるJAを追加。
◆配布および回収JA数:配布先356JA、回収226JA・回収率63.5%
◆調査方法:調査用紙を郵送し、郵便にて回収
◆調査時期:2005年9月
◆分類方法:地帯別(都市部・都市部以外)および規模別の分類は下記の通り
地帯別 都市部=東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪・兵庫・福岡のJA(46JA)
都市部以外=上記以外のJA(180JA)
規模別 大規模JA=組合員数2万人以上(65JA)
中規模JA=組合員数1万2000人以上2万人未満(79JA)
小規模JA=組合員数1万2000人未満(82JA)

図1 アンケート回収JAの概要

図2 事業別残高・取扱高の伸長率(H15何度→H16年度)
 各事業項目について、15年度および16年度の事業別残高および取扱高を記入してもらい、15年度に比べた16年度の伸長率をみたもの。
 信用事業においては貯金残高は伸びているが、貸付が減少していること。共済事業では短期共済は伸長しているが、長期共済が減少していること。経済事業のなかでも購買事業の減少が目立っていることなどが注目される。
 16年度末の回答JAの各事業ごとの平均残高および取扱高は、貯金1542億円、貸付金439億円、長期共済7288億円、短期共済351億円、購買事業71億円、販売事業90億円となっている。



図3 今後3〜5年の収益環境予想

 信用、共済、購買事業の今後3〜5年程度の収益環境について、(1)増加または堅調に推移すると見込む、(2)現在とほとんど変わらないと思われる、(3)低下する見込または低下する懸念をもっている、(4)何ともいえない、の中から1つを選択。
 各事業に共通して先行きの不透明感が強い。とくに共済事業では8割のJAが収益環境が悪化すると懸念している。また、都市部に比べて都市部以外のJAで先行きの不透明感が強い。規模別では信用事業で中規模JAにおける先行き不透明感が強い。大規模JAでは合併効果、小規模ではそれなりに安定した農業基盤によって、中規模に比べて信用事業の収益見通しが良いことが要因と推察される。共済および購買事業では規模による違いはあまりみられなかった。




図4 信用事業における収益増強施策

 収益増強策について、(1)住宅ローンをはじめとした各種ローンの増強、(2)アパートローン等の事業性融資の増強(賃貸住宅ローン)、(3)企業向けの事業性融資の増強、(4)農業資金等の増強、(5)投資信託等の販売による手数料収入の増強、(6)信連、農林中金からの利益還元の向上、(7)JAのコスト削減、(8)その他、の中から1つだけ選択。
 信用事業における収益増強策として77%ものJAが「住宅ローン」をあげている。次いで多いのが「コスト削減」で、諸施策を展開するよりもまずコストを削減して採算性の向上をはかろうとする意図が感じられる。都市部よりも都市部以外そして規模が大きいJAほど住宅ローンへの期待度が大きいといえる。また、農業融資への期待は1%と低いが、別の設問では、農業融資のニーズがないと考えるJA(125JA)がある一方で、農業融資の新規掘り起こしを推進するJA(95JA)もあり取り組みが二分している。




図5 既存顧客に対する契約増進施策(共済事業)

 共済事業において既存顧客に対するいっそうの契約増進対策についてもっとも重視しているものを、(1)「しあわせ夢くらぶ」の活用、(2)一斉推進の実施、(3)日常の推進活動を通じた信頼の獲得、顔つなぎ、(4)ライフプランニングの実施による必要保障額の算出、(5)信用事業データを活用した共済推進、(6)その他、から1つ選択。
 日常的な推進による「信頼獲得・顔つなぎ」というJAの伝統的なスタイルが都市部/都市部以外、規模に関わりなく重視されている。次いで目立つのは都市部では「ライフプランニングの実施」、都市部以外ではJA独自の推進方法である「一斉推進」となっている。規模別に見ると「しあわせ夢くらぶ」の活用が大規模では中小規模に比較して少ないこと、「信頼獲得・顔つなぎ」が中小規模に比べて大規模で割合が大きいことがあげられる。

調査結果その2に続く


(2006.2.6)

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